冷たいプールの弊害。

さて、2-a-days(一日二部練)真っ最中ですが、なんとか元気でやっています。
最近めっきり冷え込んできて朝早起きするのがきついですが、
明日の大晦日が2-a-days最終日。元旦は練習がひとつだけ。
で、2日には水泳の大会をホストして、3日はoffで、
4日から学校が始まり通常営業に戻るというスケジュールになってます。

しかーし。最近頭を悩ませていることがあります。
それは、プールのコンディション。
UNFのプールは室内温水プールなのですが、クリスマス休み明けに戻ってきてみたら、
プールの水がとっても浅く、しかもとっても冷たかったんです。
施設側が、クリスマスの休み中に水を全て抜き、清掃をして水を戻したらしいんですが、
そのときにどうも、水が十分じゃない + ヒーターをoffにしてしまったみたいなんです。
水位の問題はその後1-2日かけて徐々に増え、解決しましたが、水温が一向に上がらない。
ヒーターはonにしたんですけど、そして大きなプールを暖めるのは時間がかかること
くらいは分かりますが、それにしたってうんともすんとも上がってくれないんです。
おおーぃ、ヒーター、壊れてんの?
練習終盤になっても唇を紫にしてがたがた震える選手たちを見ていると、気の毒でなりません。

これが、気の毒とも言ってられなくなってきたのがここ数日。
選手が次々と変な症状を訴えて私のところにくるのです。
妙な筋痙攣、今まで痛みが出たこと無い部位への痛み、持病の怪我の悪化。
そうなんです、プールが冷たいもんだから、
 ・体が強張り、フォームが狂う。
 ・筋肉が緊張状態にあり、発熱のために常に収縮しているのでsoreになる。
 ・冷たいので単純に筋肉が攣る。
みたいなことが起こっちゃうわけです。
そんなわけで足が痛くなったり、肩が痛くなったり、腰痛がひどくなったり。
皆、“プール冷たすぎ!Sy、コーチに練習やめようって頼んで!”と泣きついてきます。

もっと面白いのが、こんな話。とあるアスリートが、
“Sy、テニスしてなくてもTennis Elbowになることってある?”と聞いてきたので、
“おお、あるよ”と答えると、“じゃあ私なったかも!”と大騒ぎ。
どういうこと?と思ったら、練習中、ウォームアップの最中に、急に肘が痛み出したとのこと。
ぶつけたわけでもなく、特に思い当たるフシも無し。
とにかく、“普通にゆっくり泳いでいただけ”って言うんですよね。
なのに、“肘を真っ直ぐに伸ばせないほど痛い”らしいのだから、
彼女自身も“?”だったようなのです。

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ちなみにTennis Elbowとは、日本でもテニス肘(↑)と呼ばれることのある怪我の俗名。
正式名称はLateral Epicondylitisと呼ばれ、
手首を力強く伸ばす動作を過度にしすぎることによって起こる、慢性性の怪我です。
よくテニスのバックハンドを何度も打つことによって起こるので、こんな名前なんですね。
なぜ手首の伸展の繰り返しが、肘の痛みとなって出てしまうのか?
これは、手首や指を伸ばす筋肉群は、最終的にひとつの大きな腱となって上腕骨のとある一箇所にattachするからなんですね。下の図で、いくつものExtensor筋肉たちが、Lateral Epicondyleという場所に集っている様子が分かりますか?筋肉を何度も何度も使うことによって、このスポットに徐々にストレスがかかり、じわじわと炎症が起きてしまう、という怪我なんです。
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肘はHumerus(上腕骨)、Radius(橈骨)、Ulnar(尺骨)という3つの骨が出会う関節です。
自分の手のひらを見るように手を返した状態を“Anatomical position”と英語で言うのですが
(日本語でもこういった呼び方はあるのでしょうか?すいません分かりません…)、
こうしたときに、上腕骨の親指側=(外側)にある突起部分をLateral Epicondyle(外側上顆)、
小指側(=内側)をMedial Epicondyle(内側上顆)と言います。触ってみても、
こりっとした骨が両側に確認できると思います。内側のほうが分かりやすいですけどね。
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で。ExtensorsがLateral Epicondyleにattachするというなら、
Flexorsは、そう、その逆なんです。Medial Epicondyleに集まってattachしてるんです。
b0112009_9573396.jpg
さらに。Repetitive Wrist ExtensionがLateral Epicondylitisを起こすのならば、
全く同じ過程で、Repetitive Wrist FlexionはMedial Epicondylitisを引き起こします。
何度も手首を力強く曲げる、という動作を繰り返していると、骨が炎症を起こし、
Medial Epicondylitis、いわゆる、Golfer's Elbowになってしまうんです。

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で。話が長くなっちゃいましたが。
彼女が痛いと指差す箇所を見て、おやや。
“Tennis Elbowではないね、逆側だもの。
 これはLateral EpicondylitisではなくてMedial Epicondylitis。
 テニスじゃなくてね、Golfer's Elbowと呼ばれたりするよ”
“ええっ、ゴルフ!?”
何故か本人のツボにハマったらしく、しばらく大爆笑。
“ゴルフなんかしたことないのにGolfer's Elbowになっちゃった!”

“何か手首を曲げるような動作を沢山しなかった?昨日の夜、家でwiiしてたとか”
と聞いても、思い当たるフシはやっぱり無いそう。
“でも痛みが出るのは水をかくときにこう、手首を曲げる時だから理屈は通ってるかも”
“でもその動きを今までに比べて格段にやってます!というわけではないし、
 炎症が出てしまったという事実に関してはちょっと納得がいかないんだけどなぁ…。
 水泳だけが原因なのかなぁ、練習量も以前にやっていたレベルだし…。ふむ。”

…で、原因を考えてみること数分。

あ。
水が冷たいからか!

つまりこういうことです。
水が冷たい。
 →首・肩・腰等に自然にチカラが入る。(筋収縮で熱を発生させようとする、人間の本能です)
   →Trap(僧帽筋)が緊張しているため、Scapula(肩甲骨)が引っ張られる。
     →Scapulaが十分に動かないため、肩関節の可動域が制限される。
       →本来肩で力強く水をかくところを、
        肩が動きにくいため、手首をより力強く使って水をかくようになる。
         →手首を屈曲させる筋肉たちがoveruse。
           →そのストレスが全てかかるMedial Epicondyleに炎症が起こる。

というcascadeを下ってしまったのかなと。
もちろん、推測の域でしかないですが、理には叶ってると思うんですよね。
当の本人は、とにかく“ゴルフをしたことすらないのにゴルフ肘になった”という事実が
面白くて仕方ないらしく、チームメイトたちに自慢げに話しています。
楽しんじゃう強かさは好きだからいいけどさ(笑)。

まぁでも実際に怪我という形で実害が出てしまっている以上、
私も何らかのアクションを起こさないわけにはいきません。
Risk Managementも大事な仕事のひとつですから。
コーチともあれこれ話しつつ、プールの水温改善策を色々と立てているところです。
いやいやしかし、水泳って、本当に面白いです。
これまで水泳のチームで働いたことがなかったから、見るもの聞くこと新鮮なので。
だって、今まで、プールの水が冷たいということが、怪我につながるかもなんて、
そんな可能性すら想像したことなかったですもん。
今まで考えもしなかったことを考えるようになってます。これには、感謝です。
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  by supersy | 2009-12-30 20:00 | Athletic Training | Comments(0)

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