えええ、そんな怪我があるの?

すげーーーーー面白い怪我をしました。うちの子。
その名もDistal Dorsal Radiuoulnar Dislocation。
Proximalは聞いたことありますが、distalって…。
タックルをして相手を掴んだときに、肘下あたりのproximal forearmにもう一人のタックルのヘルメットがぶち当たり、強打。痛みがproximal forearmとdistal forearmの両方にあり、手首を全く動かせなかったことから骨折の可能性があったので、すぐsplintして病院のアポの手続きを取ったのですが…。
ちょっとゴタゴタがあって、彼が実際に病院に行けたのは2日後の今日。

“骨が折れてても試合やるもんね!”
“折れてたらダメさー、キャストしてプレーできる可能性もあるけど、医者が多分ダメって言うよ”
“じゃあレントゲンとって、折れてなければいいの?”
“レントゲンとって、折れてなくて、お医者さんがいいよって言えばいいさね”
“じゃあ意地でもレントゲン取るまでに治す!”

…なんてワケのわからない会話を前日にしてたのですが。
(骨折してたら数日ではとても治らないっつーの)
診断の結果、Interosseous membraneの断裂による、Distal RadiusのPosterior Dislocation。
すごい、聞いたことないっす。
前腕には、RadiusとUlnaという二本のlong boneが在るのですが、
その二本の骨をくっつけるかのように、Interosseour membraneという、
靭帯のような繊維の塊のようなものがホネの間を様々な角度で走っていて、
複雑な手首の動きを支えているんですよね。
今回はその手首に近いほうのmembraneが断裂したことで、
二本の骨の間にseperationが起こってしまい、
Radial styloidのあたりがぽこっと飛び出してしまったという…。
b0112009_9412984.jpg
まだまだ知らない怪我なんて、いっぱいあるんだなぁ。
説明されれば良く分かるんですが、そんな怪我の可能性すら考えもしなかった。
痛みの箇所が、インパクトの箇所と違ったので(distal painのほうがひどかった)、
ほぼ間違いなく折れていると思った…。
よく怪我をして“折れたー”大騒ぎしているコドモに、“そうそう骨折なんかしないよ、骨が折れるってのは、よっぽどのチカラがいるもんだよ”と口すっぱく言っていたのですが、ホントに、そうそう骨折なんかしないもんですね。いやしかし、Interosseous membraneを断裂しちゃうのだって、相当のチカラが必要だとは思うけれど…。RadiusとUlnaの絡み具合が丁度良かったのかな、クロスしてたとか。

いやいや、面白いです。だからやめられないんです、この仕事。

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さて、話は全く変わりまして。
mixiニュースでみかけて気になったのですが、
“加齢によって筋肉痛が遅れる説は本当?”というタイトルのものがありました。
以下抜粋です。

「筋肉痛は年齢も性別も関係ありません」と教えてくれたのは寺田医院 スポーツ整形外科 湯澤斎先生。「運動によって筋肉の繊維が肉離れ等とは違う損傷をし、回復過程で炎症が起こり、この際に痛みを起こす物質が発生。それが筋肉や神経に働きかけるのが筋肉痛の原因といわれ、弱く長い負荷の運動では早く、強く短い負荷の運動では遅く発症する傾向があります。加齢により身体能力が落ちると、若い時には強く感じなかった運動が強い負荷と捉えられ、筋肉痛の加齢遅延説が出たのでは? と指摘する専門家もいます」。

うーん、この説明、どうなんでしょう?
私はとても納得できないのですが。

年を取るとHealing processが遅れる、というのは前提とも言える常識だと思うのですが。
小さい頃は、何かにゴン!と膝をぶつけようものなら、たちまちアザが出来て、
次の日には消え始めていたりしませんでしたか?
それが年を取ってくると、“このアザいつできたんだろう?”という忘れた頃に現れて、
消えるのに1週間かかる、という経験、皆さんありません?私はイヤというほどあります。
これと、同じだと思うんです、筋肉痛も。

一時期、お年寄りも沢山通うクリニックで働いていていたのですが、
そして様々な怪我のお年寄りを見てきましたが、
一般的に、やっぱり“治り”が遅いなぁ、というのが私の持った印象でした。
老廃物の撤去だったり、損傷を起こした部位に新しい組織がreplaceするのだったり、
Healing Processはやはり加齢と共に大幅にslow downするものです。

筋肉痛とは、運動によってミクロレベルの細かい細かい筋繊維たちが損傷を起こし、
それを回復してゆく過程で様々な体の中で起こる化学反応の結果、起こるものです。
そうなんです、回復過程で起こるんです。
だから、回復が遅いお年寄りでは、やっぱり遅く出ると思うんですけど。

もっとちゃんと言うと、年齢そのものというよりは、新陳代謝の遅れというほうがしっくりくるかとは思うのですが(例えば60才で今でも元気に動き回っているヒトと、40才でも全く外に出ず毎日寝転がってTVを見てばかり、というヒトを比較したら、もちろん動いていない40才のほうが筋肉痛が大幅に遅れる、という可能性は十分にあります)、それにしたって新陳代謝は加齢と共に遅れてきますから、ねぇ。加齢と筋肉痛の遅れは関係ない、と言い切ってしまうのは、ちょっとおかしくないですか?

と、言うか、最近mixiニュースを目にして思うのですが、
レベルの低い記事が多すぎやしませんか。
中学生が書いたような、科学的根拠も出展も、記事の内容をサポートするものが何も無い、
感情や雰囲気だけで書かれたものを目にする頻度が増えていて、不愉快極まりないです。
この記事も、ただ一人の方の意見が書かれているんであって(別に個人的攻撃をしているんじゃないんですけど)、業界全体が賛成しているような意見ではないと思いますし、どこかの学会で発表されたような研究でもないわけですし。
ちゃんとこういう記事、編集長なりなんなり、上司にあたる方は目を通しているんでしょうか。

言語の崩壊が騒がれて久しいですが(そして私もヒトのことを言えないのは重々承知しておりますが)、仮にもプロである記者がこういう記事を平気で世に発表してしまうとは、ちょっと悲しい気もします。こういう憤りを最近感じているのは私だけかしら…。
美しい文章を書ける人って、それだけで尊敬してしまいますよね!
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  by supersy | 2009-05-14 20:30 | Athletic Training | Comments(8)

Commented by かや at 2009-05-15 14:55 x
どれほどの力がかかったんでしょうかねぇ。腕に。
それでも折れずにmembraneの断裂&dislocationだったなんて,
ホント腕の位置がなんかいい具合になってたのか,あるいは若くて骨がしなやかだったからか・・・(断裂&脱臼も大変なので,決して良くはないのですが)。
mixiに限らずですが,簡単に情報発信ができるような世の中になったので,情報内容の真偽を確かめるってことは特に重要になってきたよね。知らない内容だったらウソの内容でも真実として信じちゃうから。
筋肉痛はまだ良く分かってないんだよね。CK値(筋損傷のマーカー)も直後と時間がたってからの2回上昇するという報告もあるし。
ただ,Sy説を支持します。
Commented by ik at 2009-05-15 16:40 x
言語の乱れ、特にネット上で見られるものには僕も憤りというか、軽く失望さえ感じていました。紙媒体と違って誰にでも簡単に意見を発信できる点が、逆に言葉の軽視みたいな結果を生んでいる気もします。日本語でも、英語でも自分の発したことばに責任を持っていきたいですね。
あとMixiニュースはほとんどジョークとしてみた方がいいと思います(笑)ダメです、ありゃ。。。
Commented by relax-yuichi at 2009-05-16 05:21
はじめまして、カンザス州の大学でアスレチックトレーニングを勉強しているヒダカと言います。少し質問と経験談を書かせてください。このmixiの記事は「筋肉痛は年齢も性別も関係ありません」としているので、何か誤解を生みそうですが、年をとるにつれて筋肉痛が遅く出る傾向だというのは間違いないと思います。ただ、それは老化=代謝の低下(加齢遅延説)ではなく、筋肉への負荷の違いによる結果である。(一般的に加齢に伴い筋力は減少するため)と私はこの記事を理解しています。筋肉痛は、弱く長い負荷→比較的早期、強い負荷→比較的遅れて、発生する傾向がある。このことについてどうお考えですか?私は日本の大学を卒業後、数年間高校生にトレーニングを指導したのですが、選手たちは強いトレーニングを行った後は筋肉痛が2日目に来ると訴えていました。経験上ですが、若い選手でもしばらく遅れて筋肉痛が来ることはあります。そんなわけでこの記事も納得させられるものがありますし、加齢との関係も大きな要因なのでは?と思っています。正直言って私は何が原因か分かりません。ちなみに、私が初めて筋肉痛について学んだときは、原因は「乳酸」だと学びました。当時はそれが常識でした。
Commented by relax-yuichi at 2009-05-16 05:21
長々と書いてしまって申し訳ありません。科学的根拠もないですし、論文も読んでいません。不愉快な思いをさせてしまったら申し訳ありません。また、このコメント欄がこのような質問や書き込みをする場でない場合はお手数ですが削除してください。
Commented by Jiden at 2009-05-17 15:12 x
その説明だけやと、俺も???となってしまいました。。上記の説明だけやと加齢と筋肉痛の遅れは関係ないともあるとも,断言できひんのあらんのでしょうか (実際,現在でている experimental researchでは、科学的に正確にいつ筋肉痛があらわれるか誰も突き止められてません) 現在 experimental studyのもと言われている大まかな過程ってMechanical overload→Myofibular disruption (e.g., Z-line streaming) and/or Cellular Damage (e.g.,Contractile protein failure)→Ca2+ Influx and overload→cell degradation→inflammatory cell invasion→muscle soreness and DOMS (e.g.,sensitization due to edema formation)→ muscle fiber regeneration → mechanical overload →…ですから,Effects of aging in the skeletal muscles during recovery from exerciseはすごく納得できます。あと思ったんですが弱く長い負荷の基準はなんですね? 5lbの重さを10秒でのeccentric exercises と10lbの重さを5秒で concentric exercisesでは、どちらが、筋肉痛が遅くでるんでしょうね? 情報を提供する側も消費する側も、情報の扱い方をしっかり考えなおさなあかんといけませんね。長文失礼しました。
Commented by さゆり at 2009-06-28 21:44 x
すいません、返事が遅くなりました。

>賀屋先生
私の論文を読む際の癖で、とりあえず信憑性疑ってかかってみる、実験そのものの設計に関して疑問を持てるだけ考え、挙げてみるというのがあるんですが、それが役に立ってます(笑)
怪我については、ちょっと色々と文献を集めて勉強している最中です。しかし、Distalはあんまりないみたいですねぇー。うーむ。

>ikさん
そうそう、クリックひとつでパブリックに公開できてしまいますからね。mixiのコラムでら抜き言葉を発見したときは激しい脱力感に襲われました。せめて書き言葉は書き言葉としてキレイに書いて欲しい…。
Commented by さゆり at 2009-06-28 22:21 x
日高さん、Jiden

とりあえず二人とも、コンベンションお疲れ様でした&お世話になりました(笑)。
えーと、まずこのトピックは私の専門分野ではないので、一生懸命それなりに調べてみたんですけど、そこんところはご了承下さい。最先端事実を知りたかったら、Ex Physの専門家の方に聞くか、ご自分で研究なさることをお勧めします。

まぁでも私が調べた限り、弱く長い負荷、強く短い負荷、といったparameterをいじっている研究はアメリカに無いと思います。やはりconcentric eccentricという別け方がほとんど。弱いや長いというのははっきりとした基準を設けるのが難しく、個人差もあるため、subjectiveになりがちだからではないでしょうか?と、いうか、今書いていて思ったんですけど、fast twitch slow twichをそれぞれターゲットにして、ということなんでしょうか。そうするとそれこそ個人差がありすぎて研究のデザインが難しくなりそうですね。
Commented by さゆり at 2009-06-28 22:22 x
続きです。

eccentricがconcentricに比べてmore severe DOMSを起こす、というのは数々の研究が証明しているところであり、私も事実であると受け止めています。ただ、筋肉痛は、弱く長い負荷→比較的早期、強い負荷→比較的遅れて、発生する傾向がある、ということに関しては私は初めて耳にしましたし、個人的な体験から言っても、そうかな?と思ってしまいます。私自身にとって不慣れな、非常に負荷のかかる運動、例えば野球のピッチングを多く続けたり、ボクシングをしたり、という今までの具体的な経験から言うと、むしろ痛みは運動終了直後から来ていました。それに関しては、ちょっと具体的なソースを読んでみたいですね。

ちなみに乳酸がたまる→筋肉痛というのは、事実ではないとはっきり授業で学びました。運動後比較的早い段階で乳酸が分解されるのに比べ、筋肉痛の痛みが出るのはそのずっと後だったりするので、連続したchemical reaction changeの一端を担っているのかも知れませんが、直接causeすることはない、と私は理解しています。

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