Stener Lesionその2。

さてさて。前回に引き続き親指の話題ですが。
大体のBony Anatomyをカバーしたところで次はこの話のキーとなる靭帯の話です。
全ての関節には靭帯があります。関節に可動域を超えてしまうような大きなforceがかかってしまったときに、靭帯がピンと張ることで関節の動きを制限するrestraintの役目を果たしてくれているのです。親指も、もちろん例外ではありません。関節を囲うように靭帯が走って、この非常にmobileな関節を適度に動くように、でも過度に動きすぎないように、調節しています。

さて。
親指のMCP jointには関節を左右から包み込むようにふたつの靭帯が走っているのですが、
この図(↓)右側に見える外に位置する靭帯をRadial Collaeral Ligament(橈側側副靭帯)、
左側にある人差し指に近いほうの靭帯をUlnar Collateral Ligament(尺側側副靭帯)と言います。
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靭帯と言うのはnon-contractileでかなり強度の高いstructureですが、それでもとんでもないforceがかかればびよんと伸びてしまったり、ブチンと切れてしまうことがあります。これが所謂sprain(捻挫=靭帯の損傷)です。

場合によっては靭帯が断裂する前に付着部の骨が引き剥がされるように欠けてしまい、sprain associated with avulsion fracture(剥離骨折を伴う捻挫)となること(←)もあります。
今回私がcase studyで扱ったのもこのケースで、X-rayで小さなbone tip(骨のカケラ)が確認されました。


RCLは構造上handそのものがgets in the way(ぬあー日本語で表現できない)するためwell-protectedで切れにくいのですが、UCLは例えば着地するときに親指から落ちてしまってうにょーん(↓)となるとoverstrechedされてしまうことは充分に有り得るわけです。

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このためUCL sprainはRCL sprainに比べてmore commonで、Gamekeeper's thumbもしくはSkier's thumbという別名でもよく呼ばれます。
※ちなみにこのgamekeeper's という名前の由来をsports-relatedと勘違いするヒトが多いのですが、サッカーのキーパーとか、そういうのとは全く関係ないんです。ゲームキーパーというのは狩猟が盛んだったイギリスなどでにあった職業で、貴族などが所有する膨大な土地でgame(獲物)の数を管理しながら育てる人のことを指します。彼らが、取った獲物にとどめを刺すときに首を掴んでくるっとシめたり、殺した獲物を袋に入れ背負って持ち帰るときに、親指がhyperextend+hyperabddcutしてよくこの怪我をsustainしたことから、この名前がついたそうです。

さて、ここからいよいよ本題です。
私のコドモが受けた診断は、UCL rupture associated with avulsion fracture & Stener lesion。じゃあこのStener lesion(ステナー病変)って何でしょう?まずはこのメカニズムを説明しましょう。
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Stener lesionの起こるメカニズムを理解するのに完璧な絵がこちら(↑)です。
Adductor aponeurosisというfasciaが緑色で描かれているのが確認できますか?
これはUCLを押さえつけるようにそのすぐ上を走っており、一番左のnormalな状態ではUCLの姿が確認できないほどです。このとき、親指にabductionのチカラがかかってUCLが伸ばされる(図の左から2番目)と、UCLの付着部分がひょっこりと顔を出します。そしてそのまま関節に対してチカラがかかり続けると靭帯が断裂を起こし、その反動で(丁度輪ゴムを伸ばして切ると手にバチーンと当たるみたいに)ruptured ligamentがsnapしてadductor aponeurosisの上にぴよんと飛び出てしまうのです(図3番目)。こうなるともう、torn ligamentは完全にaponeurosisの上になったまま戻れず、displacedされたままになってしまうんです。

つまり、断裂した靭帯がadductor aponeurosisに邪魔されて本来あるべき場所に戻れなくなってしまった状態、これをStener lesionというんです。英語でもっとカッコよく言うとa proximal displacement of a torn ligament due to the interposition of the adductor aponeurosis between the torn end and its original attachment site on the proximal phalanxがStener lesionの定義になります。

さて、問題はここからです。
多くのUCL sprainはconservative treatmentで治ると言われています。所謂immobilizationってやつですよね。数週間キャストで固定してlet it heal、必要があればリハビリもしてRTPに至る、といった感じです。しかし、Stener lesionを伴うUCL rupcureはそういうわけにはいきません。靭帯が本来あるべき場所にないのですから、残念ながら放っておくだけでは治らないんです。

こういったdynamic displacementが起こっている場合、手術が必要不可欠になります。それどころか、仮にStener lesionを伴っていなくても、UCLの断裂部がほんの2mm程度displacedされているだけでもtraditional castでは治癒が起こりにくく、結果、weakness、instability、painなどのchronic problemが出る、という研究結果が出ています。UCL sprainをconservativeに治療するのか手術すべきかという分け目は、このdisplacementの有無に大きく関わってくるのです。

A displaced UCL rupture must be surgically treated. (断裂した靭帯が動いてしまっている場合、手術は避けられない)…これを踏まえてもうちょっと討論してみましょう。このcase studyでは、avulsion fractureが起こっていた関係で、レントゲンによりbone tipの位置からStener lesionが確認されたわけですが、毎回レントゲンでこんな風にスムーズに結果が出るわけではありません。例えばavulsion fractureを伴わないStener lesionだったら?もしくは、レントゲンで見る限りbone tipはdisplacedされていないけれど、そのカケラがsignificant rotationを起こしている場合は?(コレ、結構あるそうです)こんな風に、レントゲンではnon-conclusiveなときもあります。こういうときはMRIかultrasonography(US)を使って実際にligamentの位置を調べるしかありません。最近ではmore dynamic, less time-consuming and easier to performという理由からUSを使うケースも増えているようです。適切なdiagnostic toolを使ってdisplacementの度合いを決めることが非常に重要なんですね。

ここでいっぺんまとめてみます。
Athletic trainerにとって、UCL sprainが起こったときに、以下のステップを手早く踏むことが非常に重要になってくるわけです。
 ●UCL sprainのdegreeを正しく見極める
  →stretched(1°)しただけなのか、それとも完全断裂(3°)をしているのか?
  →1°や2°の場合は、traditional immobilization
 ●断裂である場合、そのdisplacementの度合いを考察する。
  →Stener lesionはpresentか否か?
  →Stener lesionではなかったとしても、displacedされている可能性は?
 ●必要な治療を決める。
  →displacedされている、もしくはその可能性が否定できないならば、refer!
  →1° or 2° sprain、もしくはnon-displaced 3°なら、traditional immobilization
私たちはATである以上、X-rayやMRI等をorderすることはできません。それはお医者さんの仕事です。でも、ここまで考えることができれば、referするべき怪我は迅速にreferさせ、その必要が無いUCL sprainに関しては自分で治療する、という賢い選択をすることができます。

こう考えると、initial evaluationが本当に大事になってくるんですよね。皆さんUCLのテストと言えばValgus stress testが真っ先に浮かぶと思うんですが、果たしてそれだけで充分なのか…と疑問になってきませんか?それではここでevaluationのtipを幾つか、実際の私のcase studyから抜粋してみます。
●Supinated thumb appearance is the indication of a UCL rupture.
UCLが完全断裂を起こしている場合、残るMCP jointを支えている靭帯はRCLだけ、ということになりますよね。このRCL、少し角度をつけて付着しているため、intactなのがコレだけになると指がRCLに引っ張られるカタチになり、親指全体がsupination方向にrotateするのです。両側の指を比べてみて、affected side(患側)がsupinatedに見えたらビンゴです。

●The most pronounced tenderness on palpation that is located to the level of the metacarpal head is a certain indication of a Stener lesion.
痛みの位置の正確な決めることは重要です。Stener lesionを起こしている場合、そのtorn ligamentはinferiorly+mediallyにdisplacedされていることになります。avulsion fractureが起こっている場合、1st & 2nd fingerの間にあるweb spaceをぐりぐりpalpate(触診)することで、実際に小さな骨のカケラを発見することも可能です。

●If the end point is 30-45°greater than the uninjured side, a surgery is indicated regardless of radiographic appearance.
stress testは、neutral position (中間位)のみでなく、様々な角度で行ってみましょう。MCPをflextion、extention、色々なdegreeに持っていきながら、どれほどのlaxityがあるか測ってみてください。中でも、abduction, flexion, and supinationのコンビネーションが良いそうです。文献によって多少数字にズレがあったのですが、30-45°以上の過度な緩みが見られれば、手術をするのがベスト、という意見が多かったです。

それからもうひとつ、一番重要だと思ったのが…
●A close physical examination should not be delayed because of a concern about displacing a fragment by actually conducting the exam.
怪我をした本人が痛いと言っている部位をいじくるのは、こういう仕事なので仕方ないとはいえ、何度やってもちょっと罪悪感があるものです。ましてや、指をぐりぐり動かすことで、評価者自身がdisplacementを起こしてしまうのではないか?なんて心配も当然浮かんできます。でも、繰り返し書くように、initial evaluationでtearのtrue natureを見極めることが、possible chronic problemの予防にもなるのです。慎重に、しかし大胆に、comprehensiveなexamを行なうことが何より大切なのです。

さて、私のcase studyはこんな感じです。UCLなんてよく見る怪我だと甘く見ていましたが、掘り下げてみると結構深いものです!コドモの手術も見に行かせてもらい、手術中もドクターに色々と教えていただけて、貴重な経験ができました。今でもあまりリサーチリサーチしたリサーチは興味がないのですけど、case studyって面白いですね!また機会があったらぜひやってみたいとまで思うようになりました。

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  by supersy | 2008-12-28 23:59 | Athletic Training | Comments(6)

Commented by from-columbus at 2009-01-15 11:54
明けましておめでとうございます!

相変わらずの良い感じのブログですねーーー!!
ゲーム・キーパーズの由来初めて知りました。、、、僕は最近リサーチも有りかなって思うようになってます。
今年もブログ楽しみにしてますよー!
Commented by さゆり at 2009-01-19 23:42 x
どうもどうも明けましておめでとうございます。
リサーチねぇ、まぁやっぱり自分で本格的にやってみようとはならないんだけど、面白いものは面白いよね。lit reviewくらいなら好きだな。
Commented by Miy at 2009-03-01 14:44 x
初めまして♪ とても面白い!!  このlogicをきちんとexplanation出来るorthopedistは少ないと思います。
旧ブログのFDPとFDSの違いは、Subliminus Test が判りやすく、理解され易いですよ♪
Commented by さゆり at 2009-03-10 03:38 x
初めまして、コメントありがとうございます!怪我をしたときにどういうことがカラダに起こってしまったのか、現在カラダで起こっていることは何か、これからどういうことが起こる得るのか、そういうことを説明する能力、つまり知識の共有と教育が、整形外科医、ATC、PTといった職業で最もと言っていいほど大事じゃないかと思っています。Subliminus testという名前が存在するのは知りませんでした!要はMMTですよね。
Commented at 2012-04-26 00:00 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さゆり at 2012-04-26 08:30 x
訪問ありがとうございます。ステナーかどうかは別として、5ヶ月たって腫れも引かず動かせず、というのは大いに問題です。担当医さんに相談してみて、それでも理解を得られなければ、ぜひ別のお医者さんに診てもらうことをオススメします。どうか良くなりますように。

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