続・Stener Lesionに関する知識のアップデートまとめ。

昨日紹介した"Is There a Stener Lasion?"(一つ目の文献)1が引用していたHeyman et alの論文(↓)2なんですが、興味があったのでお取り寄せをして今日つらつらと読んでいたら、全然内容が紹介されていたものと違うので驚きました。「この論文ではこう言っていました」と書かれていた内容と、実際の論文の内容が合わない。これ、結構よくあるんですよね。これだから文献は常にオリジナルを読まにゃいかん…。二次引用はマジでしちゃいかんです…。
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せっかくなので昨日の記事の訂正も含めて、こちらの論文2もまとめておきます。これはかなり噛み応え読み応えありました!
この論文は2部構成になっていて、一部目では献体(14 fresh specimen hands)を、二分目では23人のUCL損傷を負った患者を被験者にしてそれぞれUCLの状態を診るためのValgus Stress Testの有効性を検証しています。

献体を使った部分では、人工的に人体の損傷を作り、Valgus Stress Testを伸展位(0°)と屈曲位(30°)で行って関節の開き具合を調べてみたとのこと。結果は…
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**このTableは論文のTableと本文の内容を元に書き起こしたものですが、論文では本文とTableの数値にズレがあり、恐らく本文のほうに誤植があると推測されます。この論文もこー、なんでこう多いんだろう、typo...。

という風に、Proper UCL (以下pUCL)のみが断裂している状態だと、伸展位ではそこそこまだ安定性が見られる(Accessory UCL、以下aUCLがまだ残っており、伸展時にtautになるから。↓以下の図参照3)にも関わらず、屈曲位の場合は不安定で関節がぱっかり開く(pUCLがPrimary Stabilizerとなるべき角度だから)、という「伸展位と屈曲位で関節の安定性に著しく大きな差が生まれる環境(平均16.0°、p < 0.01)」であるということが分かります。

一方、損傷の度が過ぎてpUCLのみならずaUCLにも損傷が及んでしまうと、伸展位でも屈曲位でも安定性が失われ、どちらのポジションでテストを行っても等しく関節がぱっかぱっか空いてしまうという結果になっています(平均8.7°、p > 0.10)。
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**一応明記しておくと、…というかまぁ、上の解剖図を見れば一目瞭然なんですが、それぞれの靭帯は親指が伸展位にあるか屈曲位にあるかでその状態が変わってきます。機能としてはpUCL resists valgus load with thumb in flexion; aUCL resists valgus load with thumb in extensionですね。ケガをする際にはまず先にPrimary StabilizerであるpUCLが損傷し、それでも止まらない力がかかった場合はaUCLも損傷する(= complete UCL rupture)が多いです。足首の捻挫でいうATFL→CFL→PTFLの順番に似ています。

…で、次に23人の急性UCL損傷を負った患者(性別・年齢不明、受傷から平均7日経過、range 0-14日)を被験者としたほうの検証では、患者をClinical Evaluation (触診とValgsus Stress Testを伸展位、屈曲位でそれぞれ行う)を通じて診察したのち、Operative Explorationを行い、身体所見と手術によって明らかになったケガの状態にどれほどの関係性が見られるかを判断。ここで一応注意しておくべきはStress Testの直前に1% Lidocaine (局所麻酔剤)を患部に注入していたということですかねー。本当に急性の怪我で、患者に痛みがあってguardingが激しい場合、今回の研究と同じ結果が得られるかは分かりません。それから、受傷から平均一週間経っているという時間軸も重要かな。目の前でUCL損傷を受傷した患者にこれらの結果が当てはまるかはわからない。

…ともあれ。
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23人中Stener lesionが確認された患者は16人だったそうなんですが、Prevalenceは69.6%となかなかに高いですね。で、被験者をStener lesionだった人とそうでない人に分けると、それぞれのテストの関節の開き具合はこんな感じ(↑)。なるほど、やはりこちらでも伸展位と屈曲位での差に違いが見られますね。Stener lesionになる患者はpUCLとaUCLの両方が断裂しており(伸展でも屈曲でもぱっかぱか)、そうでない患者はaUCLがintactである可能性が高い(= 伸展時に安定性が残っている可能性が高い)と仮説を立てると、この結果もなかなかに頷けます。p値も出しておいてよって感じですけども。
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記事にあったTable 2(↑)と本文を元に、Stener lesion有る・無しの診断基準になりそうな項目とその診断力を抜き出し・計算してみました(↓)。サンプル数が少ないので95%CI幅は広いですが、除外には1) 伸展位でのValgus Stress Testで35°よりも大きく関節が開く; 2) 伸展位と屈曲位のValgus Stress Testの開きの差が10°以上ある; というふたつの基準が、そして確定には3) Palpable Massがあることが使えるかなという印象です。
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最後にちゃちゃっともう一つだけ。
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昨日の記事で「Valgus Stress Testをする際にSupinationをしてはいけない。Neutralでやること」という内容をまとめましたが、これについてもうひとつこんな研究が出ていたのを見つけました。5 12体のFresh frozen specimenを用い、UCL Intact、pUCL断裂、UCL完全断裂(pUCL + aUCL)の状態で、それぞれNeutral, MAX Pronation, MAX SupinationでValgus Stress Testをしてみたところ、結果は以下の通り。
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とにかく一貫して言えるのが、Supinationしていると関節がパカパカ開きやすい。そしてPronationしていると関節に安定性が出るため、開きにくくなる、と。これは関節包や靭帯の弛緩・伸長が原因というよりも、PronationするとVolar Plateが背側・内側へ移動してきて、MCP関節に対して安定性を与えてしまうかららしいです。なるほど…。

そんなわけで、Supinationの状態でValgus Stress Testをすると、例えUCLがIntact (LI)でも高い角度が出てしまうことがある(= false positiveと取り違える可能性が上がる)。UCLによる関節の不安定性を見極めたい場合は、回旋によるバイアスをなくすためにSupinationはもちろん、Pronationもせず、Neutral Rotationで行うべきだ、という結論でした。うっほー、勉強になる!

そんなわけで、昨日と今日の研究結果を受けての私なりのStener lesion診断に対しての結論です。

触診Palpable massがあればStener lesionありと判断(確定)
Valgus Stress Test→テストを行う際にはSupinationとPronationの中間位(Neutral Rotation)で、特にSupinationをしないよう最善の注意を払って行う(= Displacementのリスクを最小限に抑え、且つFalse Positiveにつながるような不安定性を生まないように配慮するため)。患側と健側を比較して、患側が15°以上関節の開きが大きい場合は部分断裂(pUCL)以上の損傷がある可能性が濃く、且つ、患側の関節の開きが伸展位で35°に満たないもしくは伸展位と屈曲位での開きに10°以上の差がある場合はまだaUCLが断裂せずに残っている可能性が高く、故にStener lesionはない(除外)可能性が非常に高くなる(= あくまで部分断裂止まりか?Referの必要はなく、保存治療で回復の見込み高し)。逆に35°以上の開きがあり、伸展と屈曲位での開きにそれほど差が見られない場合はUCL完全断裂とそれに伴うStener lesionの可能性が否定しきれないので専門医にReferをするべきである(確固たる確定ができるわけではないが、これだけ条件が揃えばReferしても決して無駄ではないだろう)。
▶ 患者の痛みが激しく、十分な診察ができない場合はなるべくControlled, gentle matterでValgus Stress Testを試みる…が、それでも無理な場合は触診のみをして、一日ほど様子を見て再診察すべし。それでも症状に改善が見られない、もしくは上記のsignが確認できればRefer。

…というのが現実的なところですかね。
いやー、めっちゃ勉強になりました。楽しかった!また読みに帰ってきます。

1. Papandrea RF, Fowler T. Injury at the thumb UCL: is there a stener lesion? J Hand Surg Am. 2008;33(10):1882-1884. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.09.025.
2. Heyman P, Gelberman RH, Duncan K, Hipp JA. Injuries of the ulnar collateral ligament of the thumb metacarpophalangeal joint. Biomechanical and prospective clinical studies on the usefulness of valgus stress testing. Clin Orthop Relat Res. 1993;(292):165-171.
3. Avery DM, Inkellis ER, Carlson MG. Thumb collateral ligament injuries in the athlete. Curr Rev Musculoskelet Med. 2017;10(1):28-37. doi: 10.1007/s12178-017-9381-z.
4. Mayer SW, Ruch DS, Leversedge FJ. The influence of thumb metacarpophalangeal joint rotation on the evaluation of ulnar collateral ligament injuries: a biomechanical study in a cadaver model. J Hand Surg Am. 2014;39(3):474-479. doi: 10.1016/j.jhsa.2013.11.044.

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  # by supersy | 2018-02-12 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

Stener Lesionに関する知識のアップデートまとめ。

Stener Lesion。 (2008年12月27日付)

Stener Lesionその2。(2008年12月28日付)

大学院時代に地区学会で症例報告発表をする機会があり、その際にStener Lesion (ステナー病変)についてまとめましたが、この診断基準などについてアップデートはあるかな?と思ったのでエビデンスをさらってみました。そろそろClinical Prediction Ruleなどできてるだろう!と思ったんですけどね…。結論からいうとないです。大学院の症例報告で文献を洗いざらい読んでから早10年…意外とこの分野の研究は進んでないみたいなんです、びっくり。
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最初はこの論文1、以前斜め読みしたことがあったのですが、いい機会なので、ちょっと古いですけどまとめておきましょかね。「Stener Lesionを診断する際に我々が意識して確認すべきこと」の項目が、私が症例報告で出した結論とほとんど同じだったので発見したときに嬉しかったのを覚えています。Stener Lesionの診断基準になりえるのは、

- 30°1st MCPを屈曲した状態で行うValgus Stress Testで35°以上の弛緩が確認できる(Sensitivity 94%; Specificity 57%)2
これは伸展位でやれとか最大屈曲位でやれとか、20°開いたら陽性だとかいや健側と比較して>45°開いて初めて陽性だとか、諸説あります…というか、諸説ありすぎです。3
- MCP関節の僅かに近位にPalpable Tumor(↓)がある4
つまるところ、断裂した靭帯が「ダマ」を作っていて、これをごりっと触診中に確認できることがあるってことですね。これは好意的な解釈をすれば、Sensitivity 100.0% (59.0-100.0%); Specificity 94.1% (71.31-99.9%); +LR 17.0 (2.54-113.8); -LR 0.00と言えるのかもしれませんが、サンプル数24だし、きちんとした比較試験使ってないし、どうなのかな。
- USの画像診断力はSensitivity 76%にSpecificity 81%とまぁまぁ。MRIはSensitivity 100%にSpecificity 94%と「USよりはMRIのほうが少し診断力が高いか」という印象。
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この論文では論じられていませんでしたが、Supinated Appearanceっていうのもあると思います。UCLが断裂し、逆側のRCLが「綱引きに勝った状態」になるため、指そのものがSupinationに引っ張られるのです。文献がどれだったかは忘れちゃいましたけど。

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この論文5では、X-rayでは剥離骨折が確認できたものの、一見Displacementが確認できなかった(↓左)UCL断裂の症例を報告。その後のMRIと手術でStener Lesionが在ったことが確認されており、どうやら剥離骨折は内転筋に付着していた模様(= レントゲンで確認された骨折がUCL断裂部と一致していなかったことから、この論文でこの症例はOccult Stener Lesionと名前が付けられている)。後日撮影しなおしたX-rayでは(↓右)やっと、というかなんというか、UCLが付着した二つ目の欠片(Second Fleck)が見つかっていて、1) PA/Lateral Viewには限界があるかもしれないこと(そもそも痛みで理想的なPlaneに手を置けない場合も含め); 2) 場合によってはOblique Viewも撮るべきであるし; 3) 結局のところMRIを取ることで全体像が見えてくるのでは、と提案しています。剥離骨折の骨片が確認できた=UCLの断裂部位がCorrelateしているとはAssumeするな、最悪の場合(手術で)開けてみなきゃわからない、ということも書いてますね。ふーむ。
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この論文6が今回一番Relevantかなぁ、と思って読み始めたんですけど、歴史の話ばっかりでした。なんだかDr. Stenerの伝記のようなNarrative Reviewで、特にまとめることはなかったです…。ふたつ、記憶に残すために書き残しておくと、1) 冒頭、『年間20,000件起こるUCL断裂のうち、Stener Lesionの割合は14-88%』という興味深い統計の紹介があったこと。14-88%って、幅広っ!でもこれはUnderreportedってこともあるんじゃないかなぁ、信じるなら高いほうの数字かなぁということで、私個人的には「(部分断裂は保存療法が十分効果的なので手術が必要ないからreferしなくてもよいとして)UCL完全断裂の可能性が否定できなければ安全を期してReferせよ」という委託基準は変わっていません。2) MRIとUSの話が最後のほうに出てくるのですが、この論文では優劣をはっきりつけることはなく、どちらも有効であるが、これ!という所見はない、とまとめられています。これも、うっすらMRIのほうが優秀だとしても現段階では妥当な結論でしょうか。


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Valgus Stress Testを行うことでDispositionを起こしてしまうのでは?怖くて思い切った診察ができないよー、という不安を抱えるクリニシャンもいるかもしれません。そんな人にはこの論文(正直、今回の中でこれが一番面白かった)7!6体の献体(Preserved Specimenではなく、Fresh Frozen Cadavers)を使ってUCLが無傷の場合、Proper UCL(PL, pUCL)のみ断裂した場合、Accessory UCL(AL, aUCL)も断裂した(= 完全断裂)場合、Adductor Aponeurosisを含む周辺のFasciaも付随損傷していた場合…など様々な「想定」でValgus Stress Testを繰り返し、実際にUCLのDisplacementが見られるか(= Creation of Stener Lesion)を検証しています。ちなみに、Valgus Stress Testは通常通り基節骨と中手骨を持ち、"firm endpoint"があるまで最大Valgus Loadをかけていく、という形で行われたそうな。
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結果を言ってしまうと、UCLが完全断裂を起こしていても、Fasciaが無傷であればStener Lesionを作ってしまうことはない、とのこと。1) Fasciaにも損傷を起こさせた状態で、且つ2) 屈曲に3) Supinationを足してからValgus Testを行った場合、6人中2人の献体でStener Lesionができた(33.3%)そうなんですが、この3条件が整わなければDisplacementは起こらなかったとのこと。これは本文中の「Pronationをしてもそれほど関節の不安定性は引き出せないが、Supination位だと不安定気味(p = 0.39なので統計的有意差は無し)。同様に、指は1st MCPは伸展位よりも30°の屈曲位のほうが著しく不安定(= opens up more)である(p = 0.001、統計的に有意な差有り、↑上図参照)」なんだそうで、中でもSupinationと30°屈曲を合わせた際に関節が最も弛緩するようである(下Table 1参照)という所見とも一致します。

つまるところ、SupinationをさせないNeutralの状態で(これで3要素のうち一つが取り除けるので)、ゆっくり優しく力をかけながらテストを行えば("controlled, gentle manner")、Stener Lesionを作ることはない、と。Supinationさせんな!と明言している研究は私が知る限りこれひとつなので、忘れないようにしたいですね!
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…そんなわけで最後の論文が一番有益でした!皆さん、UCL Testする際は、Supinationを絶対にしないよう、Neutral Rotationで行うようにしてくださいね。

1. Papandrea RF, Fowler T. Injury at the thumb UCL: is there a stener lesion? J Hand Surg Am. 2008;33(10):1882-1884. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.09.025.
2. Heyman P, Gelberman RH, Duncan K, Hipp JA. Injuries of the ulnar collateral ligament of the thumb metacarpophalangeal joint. Biomechanical and prospective clinical studies on the usefulness of valgus stress testing. Clin Orthop Relat Res. 1993;(292):165-171.
3. Patel S, Potty A, Taylor EJ, Sorene ED. Collateral ligament injuries of the metacarpophalangeal joint of the thumb: a treatment algorithm. Strategies Trauma Limb Reconstr. 2010;5(1):1-10. doi: 10.1007/s11751-010-0079-7.
4. Abrahamsson SO, Sollerman C, Lundborg G, Larsson J, Egund N. Diagnosis of displaced ulnar collateral ligament of the metacarpophalangeal joint of the thumb. J Hand Surg Am. 1990;15(3):457-460.
5. Thirkannad S, Wolff TW. The ''two fleck sign'' for an occult stener lesion. J Hand Surg Eur. 2008;33(2):208-211. doi: 10.1177/1753193408087106.
6. Lark ME, Maroukis BL, Chung KC. The stener lesion: historical perspective and evolution of diagnostic criteria. Hand. 2017;12(3):283-289. doi: 10.1177/1558944716661999.
7. Lankachandra M, Eggers JP, Bogener JW, Hutchison RL. Can physical examination create a stener lesion? J Hand Surg Asian Pac. 2017;22(3):350-354. doi: 10.1142/S0218810417500411.





追記です。翌日に続編をアップして、この記事に書いたことと少し異なる解釈についてまとめました。個人的にはそちらのほうが納得です。

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  # by supersy | 2018-02-11 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

本帰国にあたって思うことその2。アメリカンフード。

私見たっぷりに書くと、アメリカと日本とでは日本のほうがご飯が美味しいです。ちょっとだけではなくて、格段にです。

ええっと、もう少し細かく正確に言うと、アメリカでも日本でも、高いお金を出して食べる「高級食」のレベルはもしかしたら同じくらいかも知れません。マンハッタンの高級レストランのご飯はそれはそれは美味しいことでしょう(食べたことないけど)。しかし、いわゆる「大衆食」のレベルが全く違うのです。職業柄、私は大学と言う場所でだいぶ長いこと働いていましたけど、例えば普通大学なんかで食べる学食って日本は安いものですし、バリエーションもありますよね。小鉢でサラダや煮物などの付け合わせが手軽に足せたりもできます。一方、アメリカは選択肢も少なく、値段設定はむしろ高いくらい。「色々なものを少しずつ」「なるべく彩り豊かに」という日本食と違い、アメリカ食は基本「一種類を山のように」「色は茶色が基本色」という感じで、多くの食事に塩か油か砂糖が入りすぎているというイメージです。くどいですが、個人の感想です。
(一例ですが、下はアメリカの中・高校で出る典型的な給食です。写真はインターネットで見つけたものですが、私は中・高校勤務経験もあるので言わせてもらうと、私が見た限りではこれと殆ど同じか、寧ろもっとひどい印象でした)
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でも、アメリカにももちろん美味しい大衆食ってあるんですよ!たまについつい無性に食べたくなっちゃうやつがあるんです…。私が日本に帰ったら食べられなくなって、時々「きー!」となるんだろうなー、というアメリカンフード五選を無意味にここに挙げてみます。


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1. Chipotle Mexican Grill
これが食べられなくなるのが一番不安です…一か月に2回は食べてるんで…。私の定番はCarnitasのBowl。ブラウンライスにブラックビーンズ、マイルドとコーンのサルサたっぷりにレタス多め。辛めのレッドソースはサイドに付けてもらって、好みで量を調節しながら食べるのが◎。最近発売したQuesoは…Quesoだけは…大失敗だったけど。


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2. Zaxby's
Raising Cane'sとほぼ同じ感じなんですけどね、一応Zaxby'sのほうが創立が少しだけ早いし、私が先に出会ったのもフロリダ時代のZaxby'sだったので個人的にはこっちが好きです、やっぱり懐かしくて。特製ソースがやみつきになります。ガーリッキーなトーストもさくさく美味しくて、コールスローの野菜付きなのも嬉しい。


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3. In-N-Out Burger
実はこれ、つい最近初めて食べたんです。テキサンとしてはWhataburgerが一番美味しいって言わないと怒られそう(Corpusが発祥の地)なんですが…あれ、ぺにょぺにょぺちゃぺちゃだしそんなに美味しいかー?よくわからん。バーガー系ではFive Guysも美味しいですけどあれは量が不必要に多く、30代半ばの胃袋にはキツイので、バーガーも小ぶりでポテトもさっくり揚がってるIn-N-Outがアメリカバーガーチェーンの中では一番美味しいと私は思います。また行きたいです…。


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4. Cracker Barrel
アメリカン・ブレックファストと言えばこれでしょう!IHOPとも少し迷ったのですが、バターの風味が香ばしくて私好みのパンケーキはこちらだし、分厚いカントリー・ハムやハッシュブラウン・キャセロールも、飲み放題のコーヒーも少しばかり味が格上だと思うのでCracker Barrelにしました。店員さんにはランキングがついていて、どの人もてきぱきニコニコ極上のサービスをしてくれるのも特徴的です。もう一回くらい行きたいなー。


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5. Mac & Cheese
これはどこのチェーン店のもの、というわけでもないんですが、このマカロニ&チーズは日本で言う「ツナマヨのおにぎり」くらいには確立されたメニューです。そんなに美味しいというわけでもないのに、ホテルのビュッフェとかにあるとついついいつも取ってしまう魔力があります。ソウルフードなんで、そのソウルに吸い込まれるんですかね…。これも恐らく日本では食べる機会が無いので、むしょーーーに食べたくなってしまうかも。


こんなことを言ってはいますが、日本に帰ったらゴハンが美味しすぎてコロッとアメリカンフードのこととか忘れたりなんかしてね。寿司、天ぷら、フジヤマー!アメリカに来る機会のある皆さんは、機会があったら是非ここらのチェーン店試してみてください。特にChipotleは、日本人にも受ける味だと思います(先日仲間内で、『あれなら日本でも流行るんじゃ?』と話していたら『あの値段($7-8くらいはする)では無理でしょ』と言われてしまいましたけども)。

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  # by supersy | 2018-02-08 20:00 | Just Thoughts | Comments(2)

キツツキは脳振盪にこそならないが、長期的に脳のダメージは蓄積している可能性がある。

ひゃー面白い論文が出ましたね!2月2日発表なのでつい4日前ですよ!

以前「キツツキは何故脳振盪にならないのか、フクロウの頸動脈は何故切れないのか」という話を書いたことがありましたが、今回は「キツツキは脳振盪にこそならないものの、頭をぶつけることで起こる長期的な脳の進行性委縮の徴候が見られるのではないか?」という可能性を示唆した論文1 を紹介したいと思います。全文無料(オープンアクセス)なので、読みたい方は是非どうぞ。
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Boston UniversityはBrain Bankがあり、CTEの研究が盛んなことで有名2 ですが、まさかこういう人間以外をサンプルに使った動物実験もしているとは…!以前にいかにキツツキの頭蓋骨の造りが人間のそれと異なり、それによって効果的に脳を守れているか、そしていかに脳振盪を防げているか(ついでにいかに我々がそれらを応用したより安全なヘルメットを作ろうとしているか…)3 という話をまとめたのでこちらは割愛しますが、「キツツキは木をつついても脳の損傷はないみたいです」とハッキリ断言した論文は、実は1976年にひとつ5 発表されたっきりなんだそうです。今回の論文の著者に言わせれば細胞レベルの分析もあやふやで、信憑性に欠けるという厳しい指摘をしており、科学の進んだ今、より詳しい方法で脳の損傷が起こっていないことをしっかり確認しましょうよ、というのがこの論文の目的です。

2018年現在、CTEの診断に最も強く結び付けられている診察的所見は死後患者の脳を検死解剖し、染色することによって確認できるFocal accumulations of tau protein (局所的なタウ蛋白の蓄積)なのですが4、今回の実験での検証方法もそれに沿っており至ってシンプル。木をつつく習性のある10羽のキツツキ(実験群)と木をつつく習性の無い10羽の木をつつかないハゴロモガラス(コントロール群、英名 Red-Winged Black Birds、カラスという名前ですが種類としてはスズメのほうに近いらしい)の脳を取り出して染色し、その細胞を分析した、というものです。
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結果、軸索損傷の指針となるGallayas silver stainはキツツキの10羽中8羽に確認された一方で、ハゴロモガラスは5羽中1羽も変色が見られなかったとのこと(p.6にはn = 10とありますが、前後の文章と合わないのでn = 5の誤植なのではと推測します)。80% vs 0%という圧倒的な数字ですね。タウ蛋白の染色は少し残念なことが起こっていて、この分析のためのハゴロモガラスの脳は先ほどと同じ5羽分用意されたそうなんですが、キツツキの脳の保存状態が悪く、3羽分の脳でしかこの実験を行えなかったそう。そんなわけで制限はありながらですが、タウ蛋白の染色によってその蓄積が確認ハゴロモガラスは5羽中0羽、キツツキは3羽中2羽に確認できたそうです。限られたサンプルですが、パーセンテージにすると66.7% vs 0%ですね。まとめると、こんな感じ。

Gallayas silver stain woodpeckers 8/10 (80.0%) vs red-winged black birds 0/5 (0%)
Tau accumulation woodpeckers 2/3 (66.7%) vs red-winged black birds 0/5 (0%)

そんなわけでこの論文の結論は「キツツキの木をつつく習性とタウ蛋白蓄積の関係性が認められる」というものでしたが、それを少しばかり飛躍させると「キツツキは(脳振盪こそ起こさないかもしれないが)、長期に渡って木をつつくことで、キツツキも自覚症状がないレベルで脳の病理的変化、委縮が進んでいる」「sub-concussive forceの蓄積が、CTEにつながるという人間に見られる現象がキツツキにも起こっているかも」ということまでも言えるかもしれません。もちろん、それを断言するにはあまりに少ないサンプル数で、バイアスがある可能性は否定できませんが。どちらにしても、非常に興味深い研究です。続報を待ちたいです!

1. Farah G, Siwek D, Cummings P. Tau accumulations in the brains of woodpeckers. PLoS ONE. 2018;13(2):e0191526. doi: 10.17605/osf.io/cvupw.
2. Mez J, Daneshvar DH, Kiernan PT, et al. Clinicopathological evaluation of chronic traumatic encephalopathy in players of american football. JAMA. 2017;318(4):360-370. doi: 10.1001/jama.2017.8334.
3. Gibson LJ. Woodpecker pecking: how woodpeckers avoid brain injury. J Zoo. 2006;270(3):462-465.
4. Traumatic Brain Injury Resource Page. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. 2017. Available from: https://www.ninds.nih.gov/Disorders/All-Disorders/Traumatic-Brain-Injury-InformationPage.
5. May PR, Fuster JM, Newman P, Hirschman A. Woodpeckers and head injury. Lancet. 1976;1(7957):454-455.

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  # by supersy | 2018-02-06 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

本帰国にあたって思うことその1。英語。

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小さいころから公園で泥んこになりながら遊ぶのが好きなタイプだったので、英才教育とは無縁な幼少時代でした。英語に関しても、英会話を習うといったような特別なことはせず、同級生と全く同じように、中学校、高校と義務教育の一環としてフツーにフツーの英語を学んできた…だけといえばだけなんですよね。イズディスアペン、ノーイットイズントと先生の後をついて復唱していたわけですよ。英語が苦手科目だったわけではありませんし、学校のテストでもそこそこの点数は取れていたんですけれど、実際にそれを使って誰かとコミュニケーションする場があったわけでもないですからね。高校の時に「あー…このままいっても英語を話せるようにはならないだろうなぁ…」「どちらかというと苦手意識が残るかも…」「英語が話せない、というのがいつか自分のコンプレックスになってしまいそうだなぁ…」と漠然と感じたのは覚えています。

なので、全く別の理由で「大学は、アメリカに留学するという選択肢もあるかな?」と思い始めたときに、「ついでに英語を一度本気で勉強するいい口実にもなるじゃないか!」とも気が付きました。アメリカへ留学するとなったら英語やらないわけにはいきませんからね。自分を「やらざるを得ない」崖っぷちに追い詰めて、必死で全身全霊全力かけてやって、なんとか壁を越えてえいやっと話せるようになっちゃえばこの「将来コンプレックスになるであろう種」を未然に摘んでしまえるじゃないかと思ったんです。

ここらへんのロジックは今思い返してみても、「なかなか先見の明のある17歳だったな」と自分を褒めたくなります。言い訳のできない環境に自分を追い込んでおいてよかった。おかげで今、英語の文献を読むことを苦痛には感じませんし、英語でスピーチしろと言われて冷や汗をかくこともありませんし、英語で道を聞かれても(なぜか日本でよくある)ドギマギせず「あの背の高い茶色い建物の向かいあたりっすかね」と教えることができます。別に英語ができるから自分は他人より偉いわえっへんと言ってるわけじゃなくて、自分自身の中で「英語ができない」ことを言い訳にしたり、足かせにしたりして自分のやりたいことに対して躊躇したり、卑屈になったりすることがなくて良かった、と思うのです(まー英語以外の理由で卑屈になることは相変わらずありますけども)。

私は日本でフツーに育った日本人だったので海外に出るまでは気が付きませんでしたが、もうひとつ喋れる言語があるというのは純粋に、本当に、面白いことです。今私の脳は「日本語脳」と「英語脳」、それから「非言語的思考脳」みたいな三部構成になっていて、日常生活を送っているときはそれなりにその全ての部分にてらてらと血流が流れているのですが(日本の番組のDVDをバックグラウンドに流しながら英語で仕事したりしてるから)、例えば英語で面白い論文を見つけて「おっ?おっ?」と夢中で読んでいるときなんかは「英語脳」に血がめきめきと流れて活性化されていくのが分かるし、日本に帰国して日本語で講義をしているときは「日本語脳」がこれまためきめきと覚醒してくるしで、その「脳の言語スイッチが切り替わる感覚」が楽しいんです。英語で深い深い思考をしているときは日本語が邪魔に感じますし、日本語で美しい文章に触れているときは英語脳はちょっと黙っとけ!となったりします(笑)。どっちにも、浸かりたいときにどっぷりいける感覚が楽しいんです(…とかいって、ぼーっと考え事しているときに急に逆言語で話しかけられると日本語と英語が混ざった自分でもよくわからない言語が口から出ることがありますが)。物事の表現方法も日本語と英語では違いますし、考え方を二通り抱えて生きているような気分にもなります。バイリンガルの人は喋る言語によって性格が変わる、なんて聞いたことがありますけど、それは本当にそうなんじゃないかなと思いますね。

とはいえ、世界各国で話されている言語は何百、一説によれば何千とあります。英語が全てじゃありませんし、英語以外にももうひとつくらい言語が喋れたらなー、勉強する機会があればなー、と私も妄想してみたりもします。でも、英語を習得した経験から、「そんな生半可な『喋れたらいいな』程度の気持ちでは一生もうひとつの言語を習得することはないだろうな」ということくらいも分かります、分かっちゃいます。いろんなタイプの人間が世の中にはいるのでしょうけれど、あくまで作られたバイリンガルの私は生まれつき言語センスが特出しているわけでもないので、言語を習得しようと思ったらその言語環境に自分をimmerseしなければ無理です。5-6か国語とか喋れる人ってすごいですよね、そういう人の脳みそ、覗いてみたい…。
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日本人は英語ができない。
このレッテルは我々自身が作り上げているもの。アメリカ人はカタコトかどうかなんて気にしない。完璧にやろうとせず、失敗を恐れず、伝えたいという意志を持つことだ。めちゃくちゃな英語でもとにかく自信を持って話せ!…という日本人向けの文章を目にしたことが何度かあります。これは、例えば海外の人と一緒にホームパーティーに参加する、とか、留学生として授業に出席する場合だったらその通りだと思います。間違いを気にせず、伝えたいという意志を全面に出して、ガンガン適当でもとにかく話しちゃえばいい。

しかし、これはあくまで自分がお客さんの立場や、相手と対等の立場の場合にのみ「acceptable」なのであって、自分が海外でプロとして仕事をしている(もしくはしようとしている)ときにカタコトの英語では絶対にダメだと私は思います。カタコトの英語だから話を聞いてくれないヒトなんて実際は沢山いますからね(カタコトでも話を聞いてくれるって、相手が自分に興味を持ってくれているって前提で成り立つものじゃないですか)。

医療職であるAthletic Trainerも、教職としての大学教授も、相手あっての仕事です。患者さんに、学生に、伝えたいことを明確に伝える、プロとしてプロらしくどっしりとした自分を見せる、相手に安心感を与え、この人は信頼できると感じてもらい、質問があるなら遠慮なくぶつけてもらえる環境を作る…ということができなければ話になりません。それを自分は日本人だから日本訛りが強くてもいいんだ、カタカナ英語でもいいんだ、というのは自分へのハードルを下げているだけだと思うし、それでアメリカ人と対等やそれ以上のお給料をもらおう、ビザをもらおうなんて考えは甘いとも思います。カタコトで話されたらどんなに賢い人でもやっぱりuneducated, unconfidentに見えるし、信頼は得難いものですから。つまるところプレゼンテーションの問題だと思うんです。それなりの知識と技術を持ったプロとして、「自分」という人間のプレゼンがうまくできてない、ということになるじゃありませんか。

私は18歳という、言語を新たに習得するには遅すぎるタイミングで渡米しました。16年間の米国生活で発音や言い回しはそれなりに上達したつもりではいますが、やはりどうしても抜けないアクセント(訛り)というのがあり、なかなかどうしてネイティブのようには完璧には発音できません。渡米以来、とにかく周りの発音を聞いて一生懸命真似したし、覚えたフレーズはとりあえず使ってみたし、現在でも発音のややこしい単語を授業で言わなきゃいけないときは事前にインターネットで発音聞いて、こっそり幾度も練習してから授業に臨みます(笑)。その裏には、やっぱり「ネイティブみたいな完璧なアメリカ英語を話したいんじゃー!」というエゴがあるんです。そういうエゴやプライドも、立派な学習動機としてアリだと思いませんか。それを、「完璧なんて目指さなくていい、日本人丸出しの英語でもいいから話せ」と、わざわざ否定することもないと思うんですよ。アメリカでそれなりに腰を据えて勉強・仕事をしようと思っている若い子たちは、「どうせ日本人だからキレーな発音や華麗な言い回しはできっこない」ではなく、「ネイティブみたいに英語喋りたい!」というしっかりとしたエゴを持って、完璧な英語目指して、毎日少しずつ努力を重ねていってください。おねーさんは応援しますよ。高みを目指すのは悪いことじゃない。

つまり何を言いたいかというと、ここまで習得しかけた英語、日本に帰国して忘れたくないなーと…。恐らく今のように日常的に英語で講義をする、ということはなくなるので少し不安です。帰国された皆さん、英語力維持のためにどんなことをやってらっしゃるんでしょうか?英会話教室でも通うのが一番確実でしょうか。駅前留学、しようかな…。自宅で英語のドラマや映画DVDを流す、とか?ちょっと工夫しないといけませんねー。

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  # by supersy | 2018-02-05 11:15 | Just Thoughts | Comments(0)

日本に帰ることにしました。と、Consensus Statement for Patellofemoral Instability。

ええっといきなりのタイトルですが、もうだいぶ長いこと色々考えていて、まぁそろそろかなぁと思ってそういうことにしました。今すぐにではなくて、今学期が終わってからなので本帰国は6月上旬になりますけども。どうして?とか、苦渋の決断?とか聞かれたりするのですが、そんなことは全然ないです。来るべき時が来たぜ!と思ったからで、アメリカでの生活は16年とちょっとで幕を閉じることになるんですが、後悔は全くないですし、やりたかったことをやりきれたので帰る、という私としては非常に分かりやすくてすっきりとした気持ちです。もちろんまだアメリカでしかできない勉強もあるので、講習に学会にと時々戻ってこようとは思いますが、これを機に生活の拠点と活動の基盤は日本にがっつり移そうと思っています。

18歳で渡米して16年間。人生のほぼ半分、成年初期の全てをアメリカで過ごしたことになりますが、振り返ってみればこれ以上ない濃さの、しかしあっという間の16年間でした。このブログは…たぶん帰国してもそのまま続けることになるとは思うんですが、まぁ何があるかはわからないので流動的に行こうかと思います。続けられれば続けるし、そうでなければやめるし、リニューアルなどするかもしれないし、ということで。



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さて。今回はすごく短いドキュメントではあるんですが、ほんの4日ほど前(1月30日)に発表になったAOSSM (American Orthopedic Society for Sports Medicine)とPFF (Patellofemoral Foundation)の合同声明(Consensus Statement)1 についてまとめておこうと思います。無料でPDFダウンロード可能です。


まず一番最初にどのような経緯でこのConsensus Statementがestablishされたのかという記述があるのですが、読んでみると16人の専門家(13人がMD、PTが1人とPhDが2人)を呼んで2016年9月にシカゴでワークショップを開き、一日かけて話し合った内容を2人の代表者が声明として書き起こし、16名の意見を聞きながら修正を加えて本合同声明の内容を導き出した、と書いてあります。16人って少ない気がするし、当然Patellofemoralの分野にも様々な派閥みたいなのもあるんだろうなと予想できます。そうなるとこの16人が特定の派閥のみから選ばれた人たちであったとか、逆に特定の派閥の人が全く入っていなかったとか、そういう面倒な可能性がありそうだなと…。どのような基準でこの16人が選ばれたのかを明記していない時点でこの合同声明の信憑性が薄れてきちゃいますね。一日のワークショップでこれだけのことを決めなければいけなかったとなれば、時間的なプレッシャーもあるでしょうし。しっかり草案見て全力でフィードバックを書く人もいれば、ロクに見もせずあーあーいいですよという人もいるだろうし。どちらにしても、厳しく言えばこの合同声明は少数の偏った専門家の意見の域を出ないというところは肝に銘じておいたほうが良さそうです(その証拠にこの論文には文献引用がひとつもありません)。

まぁこれを踏まえて読み進めます。冒頭には、各用語の定義がまとめられています。

Patellofemoral Stability: Constraint by passive soft tissue tethers and chondral/bony geometry that, with muscular forces, guide the patella into the trochlear groove and keep it engaged within the trochlear groove as the knee flexes and extends.

Patellofemoral Instability: Symptomatic deficiency of the aforementioned passive constraint (patholaxity) such that the patella may escape partially or completely from its asymptomatic position with respect to the femoral trochlea under the influence of displacing force. Such displacing force could be generated by muscle tension, movement, and/or externally applied forces.

Laxity: A physical examination finding that describes passive displacement under load.

Patholaxity: Abnormal laxity (too tight or too loose).
*normal vs abnormal laxityはこれから改めて定義される必要がある。

少しwordyに見えるものもありますが、読んでみるとなかなかに納得がいきます。私がここを数回読んだ理解としては、PatholaxityなくしてPatellodemoral Instabilityを有することはない。しかし、だからといってPatholaxity = Patellofemoral Instabilityというわけでもない。どうしてかと言うと、PatholaxityがあってもきちんとしたNeuromuscular controlがあればsymptomは発生しないからです。ってことですかね。ふーむ。

んで。

Patellamofemoral Instabilityを作りえる要素として挙げられるのが、
- Patholaxity of the medial/lateral patellar soft tissue constraints
- ↓constrain as a result of abnormal shape of the patella/trochlea
- Patella alta
- Abnormal skeletal alignment valgus/torsion
- Deficient proximal muscular strength and control

ここで興味深いのは"Proximal (hip) muscle control is important to maintain control of femoral rotation... Hyperpronation may also contribute to internal limb rotation.."という表記で、膝のメカニックスには膝だけでなく、股関節や足関節などのproximal/distal jointも関わっている可能性を示唆しています。

「問診の際に聞くべき質問」という項目もあってここも面白いのですが、個人的には私が聞かない質問はなかったので割愛します。興味のある方は本文をどうぞー。

急性障害の場合、Physical Examでチェックすべき項目は、
1. Patellar glide in extension and early flexion
2. Apprehension Test (at 30°)
3. Tenderness along medial patella/patellofemoral ligament
4. Effusion
5. Rotational alignment (i.e. femoral anteversion, tibial torsion, hyperpronation)
6. Beighton Score (↓) - 特に膝の過伸展
7. ACL, MCL, Meniscusなどの損傷と神経疾患についてもチェックすること。両側比較を忘れない
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*Beighton Score: 1-小指の過伸展90度、2-肘の過伸展、3-膝の過伸展、4-床に掌が付く、5-親指が前腕に付く
各1点のうち、2点以上あればhypermobile

慢性の場合は、先ほどの1,2,4,5,6,7に加えて、
8. 立位のアラインメント、gait
9. 可能であれば、Single-leg stance, スクワット、ステップダウン
10. J-sign, fixed lateral tracking
11. Hyperalgesia (どうやって見るの?)

なるほど、慢性の場合は動的な要素を可能な限り増やすイメージですかね。書かれていることたちにそんなに驚くことはないかもですが…。Qアングルとか大腿四頭筋や中殿筋のMMTとか、そういうことについては全く触れられていないんですね。意外!

画像診断についても割愛します。手術の項目から面白いと思ったのと書き出すと…
- Early flexionでpatellar instabilityが認められたら手術を勧めるべきである。しかし、isolated lateral retinacular release/lengtheningのアウトカムは総じて良くないため、やるならばmedial reconstructionと併せるべきである(Lateral tightnessと物理的なdisplacementがなければ寧ろlateral retinacular release/lengtheningは必要ない、とも)。
- Medial reconstructionに関してはこのテクニックが優れている、というのはなく、とにかく適切な位置に膝蓋骨を導くことが大事である。
- Tibial tuberosity medialization is NOT commonly included in surgery for instability. この手術、私高校生のころに膝蓋骨の亜脱臼という診断でやらされたんだけどなー(遠い目)…。お陰で膝が余計にぼっこり盛り上がってしまって今でも左で膝立ちができませんよ。アウトカムは"less than ideal"らしくて、今はもう全然勧められてない手術なんだ、ふーん…。
- Patella altaはCaton-Deschamps ratioが1.2以上(Insall-Salvatiのほうじゃないんだ!)でpatellotrochlear indexが15-20%の場合はsurgical correctionをせよ…という表記も面白いです。なんでもかんでも直せばいいってもんじゃないんですね。
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そんなわけで、一番学べたのは意外にも「手術」の項目でした。私が常々「これはいい手術なのか…?」と疑問に思っていた者たちがしっかりと否定された格好になっています(tightだから切っちゃえとか、trackがズレてるから骨を切って動かしてなんとなくまっすぐに並ぶようにしちゃえとか)。このstatementの〆には「ここに書かかれていること、全てが科学的に実証されているわけではない」と書いてありますが(くどいですけど、あくまでexpert's opinionですからね)、現役の膝専門Orthopedic surgeonが最低ここに書かれている内容だけでも把握して、日々の患者を診てくれればdo no harmは守られるだろうという気はします。ま、AT向けの論文ではなかったですかね。PTがもっとworkshop参加者に含まれていたら、リハビリなどの記述ももっと書けていたかも。将来的にはPatellofemoral Pain Syndromeに関するNATAのPosition Statementも将来的に出たりするんでしょうか、そちらにも期待したいです!

1. Post ER, Fithian DC. Patellofemoral instability: a consensus statement from the AOSSM/PFF patellofemoral instability workshop. Ortho J Sports Med. 2018;6(1):1-5. doi:10.1177/2325967117750352.

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  # by supersy | 2018-02-03 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

SWATA Competency Workshop & PRI Postural-Vision Integration Course

色々とイベントフルな週末でした。

一つ目のイベントはSWATA Competency Workshop。毎年1月末の木~土曜の3日に渡ってDistrict 6 (Texas & Arkansas)に住む現役のAT学生3・4年生(もしくは大学院1・2年生)を対象に行われるBOC試験対策勉強会です。会場となったのは私の母校のTexas State University-San Marcos! 訪問したのは実に4年ぶりでした。
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卒業してもう11年と言う年月が経っているのですが、奇跡的(?)に当時の恩師やPreceptorがまだ大学に残っているので押しかけていって挨拶をしたり、元同級生が今、ここで教職をやっているのでcatch upしたり、思いがけず定年退職した教授が私がくることを聞きつけてわざわざ会いに来てくれたりと、さながら小さな同窓会のようでした。
学生のころ通った教室やAT Clinic、Endzone Complexに足を踏み入れると思い出がとめどなく流れてくるので驚きました。ここで皆でくだらない冗談言ってゲラゲラ笑ったなー、とか、選手がミーティングに行っている間、この部屋で皆で勉強して時間潰したっけ、とか、ここで熱中症になって倒れたっけ(笑えない)、とか…。キャンパスはどんどん大きく立派になっていくけど、変わらない「ホーム」がここにあります。学部生時代を過ごした場所はやはり自分にとって少し特別ですよね。初心に帰る思いでした。

そもそもなんで学生対象の勉強会に参加したかって、実は講師としてお呼ばれしていたからです。昨年も講師として来てくれないかと声をかけていただいていたのですが、「すみません、既に申し込みをしてしまった講習と重なっていて…」と泣く泣く断らざるを得ず。今年はスケジュールががっつり合ったので是非に!ということで、私は日程の2日目、3時間の講義・実技を担当させていただきました。「BOCの試験に合格することはもちろん重要だ。でも受かった後も色々勉強しなきゃいけないことはたくさんあるよね、例えばATとして最低限の知識・技術をブラッシュアップするためにPosition Statementを読むとか…」という話から、「それからね、ATCになったあとは自分の好きなことを選んでがっつりずっぷり勉強できるという楽しみがあるよ!例えばこんなものがあるんだけど…」という流れでPRIのイントロの授業をやらせていただきました。講義と実技(↓)、結構みっちりやりましたよ。こんな斬新ともいえる切り口の講習を依頼してくれたCarlaのオープンさが素直にありがたいです。楽しんでもらえたかなー。
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Workshopが終わった後はダラスに移動し、土・日を利用してPRI Visionの講習を履修してきました。こっちは教えるほうでなく、受講するほうです。PRI Visionのコースは一般のPRIのコースに比べてまだまだ米国内でも関心が低いというか、参加者が限られていて非常にもったいない気がします(受講者の数が足らずに講習がキャンセルになることも度々あると聞きます)。私がこの講習を取るのは二回目なんですが、講師のRonもHeidiも「どうしたら受講者にもっとclinically applicableなやり方でmaterialを教えられるか?」を常に試行錯誤しているため、毎回切り口が少し違って、取るたびに大きな発見があります。今回も非常に実りの多い時間が過ごせました。講習を受けながら考えていたことを忘れないうちにまとめておこうと思います。

目は口ほどに物を言う、なんてことわざもありますが、目の外観以上に、各々がその二つの目をどう使ってどんな世界を見ているかもその人のヒトトナリを表しているのではという気もします。 
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その人がどんな風に世界を捉えているのか…というのは例えばその人の描く絵に大きく反映されますよね。「光の魔術師」と言われる有名画家のレンブラントの書き残した多くの自画像…それら見てみると、油絵もエッチングも(油絵は鏡を見て描いたものなので左右が反転し、エッチングは印刷の過程で再反転するので左右は結局元通りになるはずなのですが)関係なく、多くの絵の中の「自分(extension of self)」の左半身が陰に包まれているのが見て取れます。光の魔術師と言われるほどの光の使い手が、敢えて自らの左を影で塗りつぶしたその背景には、どんな意図があったのでしょうか?彼は自分自身の「左」をどういう風に見て、何を感じていたのでしょうか?色々と探求したくなる絵たちです。
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実は、これには参考になるかもしれない歴史的見解があるのです。それは、「レンブラントは目に異常があったのではないか」という説。論文も出ています。1,2 下のエッチングによる「自画像」では、左目が少し外に逸れており、目の焦点が定まりきっていないようにも見えます。一説には、レンブラントは外斜視(exotropia)があり、それによって物事を立体的に捉えることができなかったのではないか、つまり立体盲だったのではないかと推測されているのです。尤も、これは画家としては決して悪いことではないらしく(美術学校では生徒に「片目を瞑って対象物を見ろ」と指導したりすることもあるらしい)、寧ろ彼の強みになったのかもしれませんが…。1 どちらにしても、彼の世界の見方、捉え方は我々が一般的に考えるそれから少しばかり逸脱していたことは間違いなさそうです。
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「見ている世界」に影響を与えるのは、目の異常だけでなく、脳の異常も然りです。例えば脳卒中を経験した患者さんがUnilateral Spatial Neglect (半側空間無視、以下USN)をdevelopしてしまう、ということがあります。 空間無視とは文字通り、空間の存在に気が付かずそちらに注意を向けることができなくなってしまった状態を差し(= the inability to pay attention to people and things on one side)、その空間を見ることができなくなってしまった状態(= inability to see one side)とは異なります。見えてはいても、認識ができないのです。そちら側の世界に、意識が飛ばせないのです。

いまいちどういうことかよくわからない、という方もいるかもしれません。例えば、USNの患者さんに、「手本(↓左)を見てその通り絵をかいてみてください」と指示すると、こういった絵(↓右)を描くのが典型的なんだそうです。時計も家も花も、お手本の左半分が全く見えていないような、その存在を無視した絵になっているのが分かります。自分の左視野内に何があるのか、把握しきれていないのです。こういった患者さんは、日常生活の中でも、髭を剃るときは顔の右側だけを剃ったり、食事時も左側に置いてあるものに一切手を付けなかったり、車椅子を運転中も左側のものに何度もぶつかったりするそう。「左」という空間を把握する能力がぽっかりと欠如してしまう(そしてその本人は自らの『無視』に気が付いていない)というわけです。
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今「左の世界を」と言いましたが、これまた興味深いことに、USNの殆どは左に起こるのだそうです。これはwikipediaからの引用になりますが(信頼できるエビデンスではありませんけど 笑)

右半球障害による左側半側空間無視が一般的である。左半球障害による右側半側空間無視も存在するが、左半球障害が起こると通常失語症が前面に出てくる。左眼が失明している場合も多いが、見えていることもあり、半盲とは別の病気と捉えられる。
そうなんです、「左の空間無視が圧倒的に多い」のは、我々人間がそもそもどういうわけか右視野を把握する能力に長けていることに起因します。脳には頭頂葉(parietal lobe)と呼ばれる部位があり、これが空間把握を司どっている…というのは皆さんもご存知でしょうけれども、「右の頭頂葉は右と左の空間把握を司り、左の頭頂葉は右の空間把握のみを司っている」という左右の違いは知っていましたか("The right parietal lobe contains a spatial map for the both right and left visual field, while the left parietal lobe contains the right visual field only.")?私は恥ずかしながら一年前にPRI Visionの講習を初受講するまで知りませんでした。…ということは、そう、左脳で脳卒中が起きて頭頂葉が壊死しても左右の空間把握能力はそれほど影響されない一方で、右脳で脳卒中が起こって頭頂葉が影響を受けると、ヒトは左の空間把握能力のみを失ってしまうというわけなのです。

では実際に、脳卒中によって左の空間を感知できなくなってしまったUSNの患者さんたちは、一体どのように視野を「感知」、「処理」、そしてもしかしたら「修正」するのでしょうか?それについて書いてあるのがこの論文(↓)3 です。
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この論文の冒頭によれば、USNの患者は、回復早期の段階で、「右側のものに意識が向くようになる」というバイアスのため、自然と(無意識化で)gaze (注視点)が右にずれてくるんだそうですが、ひとたび自分自身の「neglect behavior (無視行動)」に気が付いて「あっ、私、左がちゃんと認識できていない」と自覚してからはgazeを意識的に左にずらすようになる人もいるんだそう。これをこの論文では「Compensatory Behavior」と呼んでいます(必ずしも悪い意味で使っているんではないと私は受け取っていますが)。

この実験では右脳・脳卒中患者(平均65.64±13.70歳)を対象にUSNに対する代償(= intentional left gaze shift)がどのように行われているか、行われている場合、脳の活性にどういった違いが見られるのかを検証。全49人の脳卒中患者さんのうち、(脳卒中こそ起こしたけれども)USNそのものがない患者は24人(脳の他の部位に損傷が認められたのか、USNを既に克服していたのかは不明)、USNが認められるが代償をしていない人が15人、USNがあり代償もしている人は10人いたそう。で、以下のタスクをこなしてもらい、その間の目の動きを観察・脳活動を計測したそうな。
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1. 5つの黒点が表示されたスクリーンを見るよう指示。
2. ビープ音の0.5秒後に、5つの点のひとつがランダムにフラッシュ(2秒間黒と赤の色の変化を交互に繰り返す)する。
3. 被験者はフラッシュしている点にできる限り速く目線を合わせ、見つめる。
4. 0.5秒の休憩を挟んでまたビープ音が鳴り、0.5秒後にまたひとつの点がフラッシュ…を合計25回繰り返す。

文章中に「4秒のインターバルで…」と書いてあるんですが、その下のFigure 1には「3秒のインターバル」とも表記してあり、図を見る限りではビープ音からフラッシュまでが0.5秒、2秒間フラッシュ、0.5秒の休憩を経てビープ音、0.5秒空いてまた2秒フラッシュ…という説明がありますから、足し算をすると一度目のフラッシュ開始から次のフラッシュ開始までは丁度3秒間。「3秒インターバル」という表現のほうが正しそうですね。

これらのタスクは2セット繰り返され、1セット目は特に指示を受けずに自然な状態で(= gaze shiftする人はするし、しない人はしない)行い、2セット目はフラッシュとフラッシュの間に画面の中央を見つめるように指示されて行った(= gaze shiftの要素を排除)そうな。
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結果は見たほうが早いですかね。こちらです。Experiment 1 (指示なし)の場合(↑図右)では、USNがない患者群(RHD、黒線)とUSNがあったけれども代償もしている患者群(USN+、青線)は全てのフラッシュに即時に対応できたのに対して、USNがあり且つ代償をしていない患者群(USN++、赤線)は左の点ふたつに反応しないこともあったり、反応に著しく時間がかかったりしたそう(p < 0.01)。目の移動線がそれを如実に表していますよね、3つの患者群で目の開始位置が全く違う。Experiment 1 (指示なし)の際に、USN+はそもそも目線が左に寄っているところから開始し、左から舐めるように右に移動することで左の見落としを防いでいるのに対して、USN++組は右寄りから開始し、そのまま中心線を割って左に行くことなく、右側にとどまり続けている(左半側空間無視)様子がよく分かります。Experiment 2ではどの組もそれほど差がなく、特にUSN+もUSN++も同様に左への反応が遅れているのが興味深いです。つまり、この両実験を比較することで「USN+の患者はleft gaze shiftという代償行動で見落としを防ぐ努力をしている」ということが言えます。

しかし、これはあくまで代償行為による見落とし防止が成功しているのであって、USN+の患者たちの脳の活性パターンは、RHDのそれとはハッキリ異なっていたそう(p < 0.05)。USN+の患者はタスク中前頭葉を過剰活性させ、頭頂葉の活動を補っているのであって(↓)、空間無視そのものを克服したわけではないのです。この論文の考察では、「USN発症」→「USNがあるという自覚が欠如しており、right gaze shiftが起こる」→「USNがあるという自覚が芽生え、前頭葉の活動を増やし、left gaze shiftをすることで左視野の把握に成功」→「左視野把握能力が徐々に脳の可塑性によって回復し、gaze shiftが消える」という流れでヒトがUSNを克服するのではないかと推測されています。なるほど、理には適っているように思います。
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左にgazeをshiftすることが、左の主視野(central vision)の再発見につながり、それがさらに広がって左の副視野(peripheral vision)の再習得につながるということなのかなー。副視野の取得がその後に起こるのであれば、gazeのshift(frontal plane movement)があくまで短期的なcompensatory strategyとして使われること事態はきっと何も問題ないはずだし、それはいわゆるプリズムを使った介入の目的(= 視界を一方向にズラす)とも非常に近いような気がする。というか、gazeが長期間経ってもshiftしない人たち(今回の研究でいうUSN++の人たち)は、そもそも左の副視野を有効活用できていなかった人たちなんじゃないかなー。認識できていない、その人にとって『存在』すらしていない世界にヒトが足を踏み込むことはないから、半側空間無視の患者さんは必然的にgaitの半分を失うことになる(左足のヒールストライク時には左の副視野からの感覚入力が必要不可欠。そこから左の立脚中期にかけて左副視野のoptic flowが生まれ、『前進している』感覚が生み出されるから)。…ん?そもそも左の世界を無視している人間が歩行をしたら、左荷重、左腕の前方スイングは生まれるのか?自分の目の前にスイングされた左腕すらも認識できないのに?認識できていない左地面に全ての体重をかけられるほど、その空間を信頼できるのか?もしかしてgaitのバイオメカニックスそのものが恐ろしいほど変化する?全てが右に偏った、lateralizeした世界で生きるのは窮屈だろうけれど、そんな狭まった選択肢で生きていることにも気が付かないなんてぞっとするし、もしかしたらその気が付かない理由が「そもそも脳卒中前から左が無かった」だったとしたら…。うーむ。色々考えてしまいます。

PRI Visionのコースを取ってから、歩行時に目の端でreferenceとなる背景を掴んでそれをさながら「視覚的足がかり」にしてぐいっと自分を引っ張るように進んでいる感覚が楽しくなっています。こうして人間は前進するのだと。歩行がいかに感覚統合の賜物かってこと、考えれば考えるほど圧倒されてしまいますね…。近視も乱視もがっつりある私ですが、PRI的に目の問題はどうやらそんなになさそうです。

空間無視…見えているのに把握できない…。実際に脳の中でどんな混乱が起きているのか、それとも私が思う以上に波一つない海のように静かで穏やかな世界なのか。脳卒中患者の頭の中、心の中をこっそり覗かせてもらいたい気持ちでいっぱいです。レンブラントがもしかしたら見えていなかったように、左にも光と色があり、空間が広がっているのだと実感しながら生きていきたいですね。PRI Visionを受講してのreflectionと絡めてのまとめになってしまいましたが、いやー、つまるところ、とても面白い論文でした!もうちょっとこの分野も読み込んでみるかなー。

1. Livingstone MS, Conway BR. Was Rembrandt stereoblind? N Engl J Med. 2004;351(12):1264-1265.
2. Mondero NE, Crotty RJ, West RW. Was Rembrandt strabismic? Optom Vis Sci. 2013;90(9):970-979. doi: 10.1097/OPX.0b013e31829d8d48.
3. Takamura Y, Imanishi M, Osaka M, et al. Intentional gaze shift to neglected space: a compensatory strategy during recovery after unilateral spatial neglect. Brain. 2016;139(11):2970-2982. doi: 10.1093/brain/aww226.

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  # by supersy | 2018-01-30 23:30 | PRI | Comments(0)

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