「エキサイト公式プラチナブロガー」スタート!

遺伝する感情。

これは全然ATに直接関係ない内容なんですが、しばらくつらつらと考えていたことで、どこかに書き残しておきたかったので。備忘録のような内容ですみません。

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恐怖は遺伝する、という実に興味深い現象が動物実験によって2014年に実証されているんですね。1 それまでは赤子は親の感情を見ながら良き悪きを学ぶ(=「お母さんが怖がっているのだから、悪いものに違いない。僕も怖がろう」)、というsocial learningのコンセプトが主流でしたが、この研究では『母親が恐怖だと思った対象に生まれた子が初めて接触したとき、子も同じように恐怖を覚えるのか?』という感情の遺伝性について調査しています。
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Debiec & Sullivan1 が行った実験は至ってシンプル。メスのネズミに「ペパーミントの香りがすると電気ショックを受ける」というペアとなる刺激を繰り返し、恐怖を刷り込ませておいて、そのあと妊娠・出産した赤ちゃんネズミがペパーミントの香りを恐れるかを検証するというものでした。実験結果をみてみるとあら不思議。学習された「恐怖」は母親ネズミ妊娠前に刷り込まれたものであったにも関わらず、赤子もちゃんと初めて嗅ぐ「ペパーミントの香り」を恐れたというんですね。ネズミの赤ちゃんは生まれたばかりでは目も開かず、耳も聞こえないため、母親と同じ巣にいる状態で示したこの反応が「母親の行動を見て、それを真似たもの」であることは考えにくいのですが、念の為、と研究者は1) 親ネズミが巣にいない場合と2) (刷り込みをされていない)代理母ネズミが赤ちゃんネズミと一緒にいる場合なども検証。母親ネズミがいる、いないに関わらず、赤ちゃんネズミはペパーミントの匂いを嗅ぐと恐怖を示すという結果が確認されました。

母親が「後天的に」学んだ恐怖が、世代を超えて子供に「先天的に」植えつけられるようになる、というのは実に興味深い発見です。この「恐怖の遺伝」が一世代という短い期間で起こり、少なくとも2世代先まで伝えられることが別の研究2でも実証されています。母親のみでなく、父親が学んだ恐怖でも同様の遺伝が起こるようです。2 文字通り、感情が遺伝子に刻まれるわけですね、考えてみると面白いです。
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元々感情って生存確率を上げるために大いに意味があったものだと思うんですよね。我々が脂肪分や糖分のたっぷりのケーキやピザを食べて「おいしい!」と思ってしまうのも、それらが非常に効率のいいエネルギー源で、それを食べてきた種や個体が多く生き残ってきたからこそ。逆にカラフルな色彩を持つヘビやカエルやクモを見て「なんかやばい、怖い」という感情を持つのも、こういった生き物が毒を持っていることが多く、「恐れる」をいう感情を覚えた種や個体がその毒にやられることなく生き延びたからでしょう。

上に紹介した実験で検証されていたのは「恐怖」に限定したphenomenonでしたが、生存と言う観点から考えると「喜び」の感情も遺伝されてしかるべきという気もします。これらも是非似たような研究で見てみたいものです。例えばペパーミントの香りを嗅いで、同時に餌を与え続けると、子供もペパーミントの香りを嗅いで興奮するようになるのかとか…。面白いのが「ペパーミントの香りを嗅ぐと興奮する母親」と「ペパーミントの香りを嗅ぐと恐怖を感じる父親」と交配させたときですね。遺伝として、喜びと恐怖と、どちらの感情が勝つのか?もしくは母親と父親、どちらの遺伝子力がより強いのか?様々な研究ができそうです。わくわく…。あとは、どれだけ早く遺伝をひっくり返すことができるのか?先天的に「ペパーミントの香りは怖い」という遺伝子をもって生まれてきた子供に「ペパーミントの香りは実はいいものだ」と真逆のことを覚えこませ、それを遺伝子に上書きするのに一世代で十分なのか、数世代かかるのか?今のところ、「遺伝子の感情によるアップデートは我々が思うより早い」ように私には見えるので、ここらへんもすごく興味があります。

科学的な観点から、この結果を自分たち自身に反映させると、これもまた面白いディスカッションが引き出せそうです。何を遺伝子に残すか、その究極のコントロールをしているのは我々の全てのDriving Forceの源である脳のはず。ヒトに渡される遺伝子すら感情によって書き換えられるのだとしたら、我々の所有物である脳が受ける影響はそれよりも大きいのではと私は考えます。湧き上がる感情に引っ張られ、脳は刻一刻と変化する…『脳の可塑性(neuroplasticity)』というコンセプトが改めて浮かび上がってくるんですよね。我々のなかで日々うねっている「感情」は我々の脳に確実に刻まれ、そして恐らくその脳が「これは後世に伝えるべき重要な感情だ」と認識したら遺伝子にも書き残されるということになるんではないかな、と思うのです。
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あなたが「好き」で見ると興奮するような事柄を、あなたの子供も同じように「好き」になるのでしょうか?となれば、あなたが「大嫌い」なものも同様にあなたの子供は「嫌う」のでしょうか?あなたが「これは子供に遺伝して欲しくないなぁ…」なんて思う感情はありますか?そうであれば、手遅れになる前にあなたの感情そのものも修正すべきでしょうか?ううむ?

例えば私は少し潔癖症なところがあって、回し食いなどできないタイプの人間なのですが、自分の子供はそんなに神経質にならないといいなぁ、なんて無責任に思います。ふふふ、我ながら、自分を棚に上げてなんて勝手な欲求でしょう。自分に起こる「いやだな、汚いな」という感情をもう少しコントロールできるようになれば、後世にも良い影響が残せるかも知れません(笑)…少し努力してみようかな。なんだか頭の中を、小さな誰かに覗かれている気分です。自分の頭の中の感情で影響を受ける人が未来にいるのかもしれないと考えると、少しばかり背筋が伸びますね。

1. Debiec J, Sullivan RM. Intergenerational transmission of emotional trauma through amygdala-dependent mother-to-infant transfer of specific fear. Proc Natl Acad Sci. 2014;111(33):12222-12227. doi: 10.1073/pnas.1316740111.
2. Dias BG, Ressler KJ. Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations. Nat Neurosci. 2014;17(1):89-96. doi: 10.1038/nn.3594.

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  # by supersy | 2016-08-26 17:00 | Just Thoughts | Trackback | Comments(0)

電気治療 (TENS): 「鎮痛効果」のみを狙った対処療法に意味はあるのか? と、ネブラスカ出張。

Electrical Stimulation (通称E-stimもしくはStim、電気治療)と言えば、多くの治療家に「意味がない物理療法」の代名詞として使われることが多いように感じます。英語でも「あの人はIce & Stimしかしないからね」という表現は「症状を一時的にマスクする対処療法をするくらいしか能のない、Old Schoolなセラピスト」という意味でよく使われますしね。

私はIce & E-stimのコンビネーションにこそ意味がないとは思いますが、痛みそのものを治療対象にすることに関しては全く否定的ではありません。個人的な話ですが先学期いわゆる重度の「寝違え」を起こしてしまい、ふとした拍子に左を向こうとすると、そのたびに気が遠のくほどの電流のような激痛が左腕を駆け抜ける、という、ひどく不快で、しんどい思いをした日が2日ほどありました。その痛みたるや仕事にならないほどで、同僚に「この痛みを何とかしてくれるならなんでもする」と泣きついたくらいです。痛みは人から機能を奪い、感情をロックアップさせます。ですから(もちろんcontextによりますが)、痛みそのものを取り除こうという施術者側の努力は、決して周りから嘲笑されるようなものではないと思うのです。以前も書きましたが、there's time and place for everything -鎮痛治療が求められる場面で、適切で最も効果的なそれを選択・deliverできる力はATとして必須だと私は思います。
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さて、話を戻すと数ある電気治療の中でもとくにPain controlに使われることが多いのがいわゆるTENS (transcutaneous electrical nerve stimulation)というモードですが、これに関して読んだ研究を忘れないうちにまとめておきたいと思います。まず一番のお勧めはこの論文―TENSを使って鎮痛効果を狙う場合、どういうパラメーターが最も効果的なのか?というところをエビデンスを通じて振り返り、要約しているのが2008年発表のClaydon & Chesterton1 のSystematic Review(↓)です。
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Claydon & Chesterton1 がこの論文で強調しているのは「High intensity TENS」がどうやら最も効果がありそうだということ。Low-intensity(微弱電流)ではなく、がっつりビリビリくるようなそれなりに強いものがいい、ということなんです。もっと細かく言うと、「high frequency, high intensity, local application ‘intense’ TENS」か「low frequency, high intensity, remote ‘acupuncture-like’ TENS」がよさそうである、と。 他の論文も見てみましょう。Chen氏らのSystematic Review2 によれば、Pulse Durationの長短とそれに反比例するPulse Frequencyはどうやら鎮痛効果の程度に影響がないのでは、という指摘もあるのです。特に様々なPulse Frequencyを使った研究結果を比べてみても鎮痛の程度に大差がなかったことから、1) どのPulse Frequenciesでも等しく効果的である; 2) どのPulse Frequenciesも等しく効果的でない; もしくは 3) 研究のデザインが甘く、Pulse Frequency間の違いを認められるような造りではなかった…という3つの可能性が今のところ考えられますが、鎮痛効果を高める上で、今のところPulse Frequencyを気にしすぎる必要はないようです。

私がTENSをPain Control目的で使う場合、個人的なルーティーンはいつもこうでした。1) Motor level intensity, 2) Low frequency (≤10 Hz), 3) Longer pulse duration. セオリーでいうと、このパラメーターが上脊髄性疼痛抑制 (by releasing endogenous opioid peptides and serotonin)を促し、また脊髄内で上がってくる痛みのシグナルをブロックすることで鎮痛効果が高いと、つまり下行性 (descending) & 上行性(ascending)疼痛抑制の併用が可能だと認識していたもので…、High frequency (≥50 Hz) TENSだと後者のみですからね。3 一般的に疼痛抑制は上脊髄性 (supra-spinal)のメカニズムのほうが効果が長く続くとも言われていますし。でもこうしてエビデンスを読み返してみると、どうやら「Frequencyは治療アウトカムに影響を与えない2、むしろ「大事なのはIntensity1,4なようですね。 “Strong but not painful (ビリビリと強く感じるけど痛くはない程度)” で “sensory” レベルのTENSは"sub-sensory"かプラシーボより格段に鎮痛効果が高い、というのはわりかしはっきりとしたエビデンスのようです。4 なので、これらのエビデンスを加味した上で、これから私が患者にTENSを使うというのであれば、私が新たなルーティーンにすべきば… 1) 患者にhigh- と low-frequency TENSの両方をそれぞれ異なる治療セッション中に試し、どちらが好みか選んでもらい、そちらの周波数を使う。どうせ違いがないというならば、患者が好きだという方を選んでもらった方が不快さは減るかもしれない。2) Intensityは最低でもSensory Levelで。もし患者がもっと強いのが好みなら(Motor Levelが好きな選手も今まで結構出会ったので…ちなみに私もMotor Levelは結構好き)、私はここも好みに応じて上げてしまってもいいと考えます。論文では総じて「最低でもSensory」という表現が使われていたので、「Motorになるとダメ」というわけでもなさそうなので。私が考えていたよりもTENSのパラメーターはもうちょっとフレキシブルなものなのかなー、というのが率直な印象です。これからは患者にももっと多くの選択肢を与えられ、色々試してもらったうえで、その人好みの治療をtailorしていくことが可能かも!

例えば術後の痛み(postoperative pain)とか、どうしても数日間患者の感じる痛みのレベルが上がらさるを得ない場合にも、TENSを使うことで痛み止め薬の服用量が抑えられ、痛み止め薬の副作用というリスクを負わなくてもよくなる、5-9 というのはTENSの二次的な隠れたbenefitであると私は考えています。また、TENSはCryotherapyに並ぶdisinhibitory modalitiesとしても有効な物理療法であり、AMIの治療には欠かせないツールでもあると思うのです。10,11 最近のSystematic Review11 にはTENSのほうがCryotherapyよりも "より強い、一貫性のある効果をもたらす" と報告されており、"現存する最善のdisinhibotory interventionである” ともまとめられています。これは私の個人的な見解ですが、例えば膝の術後の『鎮痛効果』の一部には、もしかしたらdisinhibitoryメカニズムによる鎮痛もいくらか入っているのかもしれませんよね。例えば、効果的にdishinibitionできたから、大腿四頭筋の機能回復が迅速に起こり、それによって膝が安定性を再獲得したことによって歩行時の痛みが減少した、とか…。



さて、話は全く変わりますが、今週末はネブラスカ、リンカーンにあるPRI本部へ行ってきました!8ヶ月ぶりくらいです。詳しいことは諸事情があって書けないのが残念ですが、今年4月にオープンした新しいPRI本部の建物(↓)をたっぷり満喫させてもらい、それからRonやMikeにたくさん質問をぶつける機会があり、本当に充実した2日間を過ごすことができました。なんとカンザスからケニーも片道3.5時間の道のりを運転してきてくれて、夜には12月の日本講習に向けての打ち合わせもがっつりすることができました。遠いところをありがとう、友よ…!
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こんな書き方も自分でどうかと思いますが、今更改めてPRIにドはまりしています。最近楽しくて楽しくて…。やっと少しわかってきた、ような気がする…(数か月後には「やっぱり全然わからない」とか泣いてるかもしれないけど)。Ronの言葉を聞いていると、徐々に「宇宙に飛ばされる」回数よりも「核の部分が見えてきた」感覚のほうが多くなってきてそれが楽しいです。前回の彼の「上腕三頭筋は周波数だ」のコメントじゃないけど、徐々に私が彼の「周波数」に合わせられるようになってきたのかも!昨年12月のRonの「右に脊柱側弯症があるならば、左にも曲げればいいじゃない」というマリー・アントワネットばりの言い回しにわかったつもりになって笑っていましたが、今になってその言葉の本当の意味がわかるようになってきました。彼の言葉をいかにそのまま(でもわかりやすく)日本で伝えるか、まだまだ試行錯誤の日々です!

1. Claydon LS, Chesterton LS. Does transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) produce ‘dose-responses’? A review of systematic reviews on chronic pain. Phys Ther Reviews. 2008;13(6):450-463.
2. Chen CC, Tabasam G, Johnson MI. Does the pulse frequency of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) influence hypoalgesia? A systematic review of studies using experimental pain and healthy human participants. Physiother. 2008;94:11-20.
3. Resende MA, Sabino GG, Cândido CR, Pereira LS, Francischi JN. Local transcutaneous electrical stimulation (TENS) effects in experimental inflammatory edema and pain. Eur J Pharmacol. 2004;504:217–222.
4. Moran F, Leonard T, Hawthorne S, Hughes CM, McCrum-Gardner E, Johnson MI, Rakel BA, Sluka KA, Walsh DM. Hypoalgesia in response to transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) depends on stimulation intensity. J Pain. 2011;12(8):929-935. doi: 10.1016/j.jpain.2011.02.352.
5. Bjordal JM, Johnson MI, Ljunggreen AE. Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) can reduce postoperative analgesic consumption. A meta-analysis with assessment of optimal treatment parameters for postoperative pain. Eur J Pain. 2003;7(2):181-188.
6. Unterrainer A, Friedrich C, Krenn MH, Piotrowski WP, Golaszewski SM, Hitzl W. Postoperative and preincisional electrical nerve stimulation TENS reduce postoperative opioid requirement after major spinal surgery. J Neurosurg Anesthesiol. 2010;22(1):1-5. doi: 10.1097/ANA.0b013e3181b7fef5.
7. Kara B, Baskurt F, Acar S, et al. The effect of TENS on pain, function, depression, and analgesic consumption in the early postoperative period with spinal surgery patients. Turk Neurosurg. 2011;21(4):618-624. doi: 10.5137/1019-5149.JTN .4985-11.0.
8. Unterrainer AF, Uebleis FX, Gross FA, Werner GG, Krombholz MA, Hitzl W. TENS compared to opioids in postoperative analgesic therapy after major spinal surgery with regard to cognitive function. Middle East J Anaesthesiol. 2012;21(6):815-821.
9. Eidy M, Fazel MR, Janzamini M, Haji Rezaei M, Moravveji AR. Preemptive analgesic effects of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) on postoperative pain: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Iran Red Crescent Med J. 2016;18(4):e35050. doi: 10.5812/ircmj.35050.
10. Gabler CM, Lepley AS, Uhl TL, Mattacola CG. Comparison of transcutaneous electrical nerve stimulation and cryotherapy for increasing quadriceps activation in patients with knee pathologies [published online Jan 5 2015]. J Sport Rehabil. 2015.
11. Harkey MS, Gribble PA, Pietrosimone BG. Disinhibitory interventions and voluntary quadriceps activation: a systematic review. J Athl Train. 2014;49(3):411-421. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.04.

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  # by supersy | 2016-08-21 23:30 | Athletic Training | Trackback | Comments(0)

運動前のアイシングは、パフォーマンスを向上する?

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運動前にあなたが身体の痛むところがあったとして(膝や肩など)、あなたはその患部を温めますか?冷やしますか?

Pain Control (鎮痛効果)
とりあえず、現時点でCryotherapy (冷却療法 - i.e. postop wrist,1 knee,1,2 acute ankle sprains,3 neck and back strains,4 LBP5)もThermotherapy (温熱療法 - i.e. neck and back strains,4LBP,5 chronic pain,6bluebottle stings7)も鎮静効果アリ、というのはエビデンスとしてはっきり出ていると思うんですよね。で、じゃあ比べたときにどちらのほうがより効果が大きいのかな?と疑問に思い、直接比較をしている研究を探してみたらふたつのRCTが見つかりました。一つ目は60人の頸・胸・腰椎の痛みを抱える患者(平均37.8±14.7歳、被験者の51.5%が女性)を使ったRCTで4 は鎮静効果は冷却と温熱で「等しい」という結論。もうひとつのほう(患者87人、平均34.48歳、被験者の51.72%が女性)では5急性腰痛には温熱のほうが冷却よりも効果が高かったという報告が(McGill Pain Questionnaireを使って計測した痛みの減少度 - 温熱治療 12.70±3.7から0.75±0.37へ vs 冷却治療 12.06±2.6から2.20±2.12, p≤0.05)されています。うーん、もうちょっと見てみないとわからないですね。現時点で決定的にこっちが優秀!と断言できるわけでもないみたい。
大前提として、施術者は冷却と温熱ではとりあえず身体に働きかけるメカニズムと、その生理学的効果が真逆である、ということは考慮すべきですよね。鎮痛効果に加えて、冷却療法は組織の温度を下げ、代謝を下げ、血流を遅らせ、炎症とtissue extensibilityを低下させるなどの変化を引き起こすに対して、温熱療法ではその逆が起こる。8,9 なので、今のところ私個人の解釈としては、Pain controlに冷却か温熱を使おうと思ったら、今のところどちらも有効であるから、患部にアクティブな炎症が見られるかどうかでやはり判断しようかな、という感じです。患部が熱を持って赤みを帯びていれば冷却を、そうでなければどちらでも害がないと判断し、患者の好みを考慮した上でケースバイケースで決めようかな、という。

Prior to Activity (運動前)というタイミング
で、次に考えたいのが「運動前」というタイミングで痛みを抑えたい場合、どちらがより相応しいのか?という切り口。運動前にアイシングなんかしたら筋肉が縮こまっちゃってダメなのでは?という一般的な見解とは裏腹に、「暑い場所で運動をする前ならば(例えば夏場、Footballの2-a-daysとか)、冷却療法の使用は非常に良い」という結論を出したのは2013年発表のMeta-Analysis。10 運動前はもちろん、運動中のアイシングもアリだ、と論じています。このMeta-Analysis10で報告された唯一の「悪影響」は「スプリント競技のパフォーマンスは低下する」というところでしたが、でも「中・長時間 (intermittent & prolonged)の運動ならばパフォーマンス、キャパシティー共に著しく向上する」というのです。10 もうひとつのシステマティックレビューでも11 運動前の外・内部からのクーリング (i.e. air, water, ice)を推奨する結果が報告されています。運動前に冷やすことで、体温調節能力 (thermoregulatory - core, skin and or body temperature)、心肺機能 (cardiovascular - heart rate, sweat rate)、そして精神的 (psychological - thermal sensation of comfort, rating of perceived exertion)機能値が上がり、長期的(prolonged)パフォーマンスが向上するとのこと。11 しかし例によって、先ほどのMeta-Analysis10と同様、爆発的で短期間のスプリントのような運動、そしてこのReviewでは中期(intermittent)の運動も少し悪影響を受ける ("minimally affected")と書かれてもいるんですけども。11 良い効果は、運動後にも続くようです。Mila-Kierzenkowska氏ら12 はsubmaximal exercise前の全身冷却 (whole-body cryotherapy)は酸化ストレス度を減少させ、リカバリーを早める効果があると報告しています。これは選手にはありがたいですね。
「運動前のアイシング反対派」の意見としては、Bleakley氏ら13が自身のシステマティックレビューで「運動前にCryotherapyを20分以上使用すると筋力、スピード、パワー、アジリティー、手先の動きの正確さなどが低下する」と論じていますが、Pritchard & Saliba14氏らはこのシステマティックレビューの臨床的実用性に疑問を呈しています。彼ら曰く、運動前のアイシングはほとんどの場合が20分以下であるし、それにしっかりとしたウォームアップを組み合わせればその冷却効果が害になることは少ないはずだ、と。これにね、もう2つくらい研究を加えると面白い全体像が見えてくるかなと思うんです。 1) あるControlled laboratory study15 によれば10分間の足首をアイシングするとDynamic postural-stability ability (Star Excursion Balance Test Score)が低下する、という報告がある一方で、 2) 最近発表されたRCT16 には10分間の足首のアイシングをしても筋肉の反応時間 (Reaction time)は影響を受けなかった、とある。 つまるところ、運動前に行う冷却療法の『悪影響』というのは 1) duration-specific (どれくらいの間、冷却を続けたかに影響を受ける、≤10分がより安全?) であり、 2) task-specific (その後に行う運動がどういったタイプなのかに左右される、i.e. short-, intermittent- vs prolonged activity)であるのではないか、というのが私の導いた結論です。
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Clinical Bottom Line
臨床的にこのエビデンスをどう使うべきか?と考えたときに、私の個人的な見解としては、運動前、痛みを軽減するためには運動が暑い中行われる、もしくは長期的な運動 (且つ、スピード系、パワー系ではない運動)である場合には率先して冷却療法を使おうと思います。その際、使う長さは短め(10分かそれ以下)に押さえたほうが賢明でしょうね。また、部位が指や手で、そのスポーツが指先の細かいmotor controlを必要とするようなスポーツの場合は (i.e. 野球や弓道、射的など)、悪影響が優る恐れがあるので冷却療法は避けたほうが良さそうです。温熱療法のほうがface validityがありますし (=選手も運動前にはあたたかくする、がアタリマエで、より理に適ってると考える子が多いでしょう)、あとは個人的にはやはり練習前には患部を温めることを好む選手のほうが多いかなとも感じるので…温熱が患者の抵抗も少なく、色々な意味で安全なチョイスかと。温熱療法が好きだ、と特に強く感じている選手には私もそれに反論することはないかと思います。唯一私が「いや、温めないほうがいい」というのは、くどいですが、アクティブな炎症が見られる場合のみかな。

まだまだ世の中アンチCryotherapyの人が多いみたいですけど、私は使いどころさえ正しければ(アイシングに関わらずですけど、どんな療法でも)絶対に良い効果を発揮すると思ってます。しかし今回、「運動前にアイシングはcontraindicated(禁忌)」くらいに教わったことのある私には、運動前のアイシングがパフォーマンスが向上するようなことがあるとは、なかなか衝撃的でした。いやいや、まだまだ勉強が足らんみたいっす。

1. Bleakley C, McDonough S, MacAuley D. The use of ice in the treatment of acute soft-tissue injury: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Sports Med. 2004;32(1):251-261.
2. Raynor MC, Pietrobon R, Guller U, Higgins LD. Cryotherapy after ACL reconstruction: a meta-analysis. J Knee Surg. 2005;18(2):123-129.
3. Bleakley CM, McDonough SM, MacAuley DC, Bjordal J. Cryotherapy for acute ankle sprains: a randomised controlled study of two different icing protocols. Br J Sports Med. 2006;40(8):700-705.
4. Garra G, Singer AJ, Leno R, Taira BR, Gupta N, Mathaikutty B, Thode HJ. Heat or cold packs for neck and back strain: a randomized controlled trial of efficacy. Acad Emerg Med. 2010;17(5):484-489. doi: 10.1111/j.1553-2712.2010.00735.x.
5. Dehghan M, Farahbod F. The efficacy of thermotherapy and cryotherapy on pain relief in patients with acute low back pain, a clinical trial study. J Clin Diagn Res. 2014;8(9):LC01-LC04. doi: 10.7860/JCDR/2014/7404.4818.
6. Masuda A, Koga Y, Hattanmaru M, Minagoe S, Tei C. The effects of repeated thermal therapy for patients with chronic pain. Psychother Psychosom. 2005;74(5):288-294.
7. Loten C, Stokes B, Worsley D, Seymour JE, Jiang S, Isbister GK. A randomised controlled trial of hot water (45 degrees C) immersion versus ice packs for pain relief in bluebottle stings. Med J Aust. 2006;184(7):329-333.
8. Malanga GA, Yan N, Stark J. Mechanisms and efficacy of heat and cold therapies for musculoskeletal injury. Postgrad Med. 2015;127(1):57-65.
9. Nadler SF, Weingand K, Kruse RJ. The physiologic basis and clinical applications of cryotherapy and thermotherapy for the pain practitioner. Pain Physician. 2004;7(3):395-399.
10. Tyler CJ, Sunderland C, Cheung SS. The effect of cooling prior to and during exercise on exercise performance and capacity in the heat: a meta-analysis. Br J Sports Med. 2015;49(1):7-13. doi: 10.1136/bjsports-2012-091739.
11. Ross M, Abbiss C, Laursen P, Martin D, Burke L. Precooling methods and their effects on athletic performance : a systematic review and practical applications. Sports Med. 2013;43(3):207-225. doi: 10.1007/s40279-012-0014-9.
12. Mila-Kierzenkowska C, Jurecka A, Woźniak A, Szpinda M, Augustyńska B, Woźniak B. The effect of submaximal exercise preceded by single whole-body cryotherapy on the markers of oxidative stress and inflammation in blood of volleyball players. Oxid Med Cell Longev. 2013;2013:409567. doi: 10.1155/2013/409567.
13. Bleakley CM, Costello JT, Glasgow PD. Should athletes return to sport after applying ice? A systematic review of the effect of local cooling on functional performance. Sports Med. 2012;42(1):69-87. doi: 10.2165/11595970-000000000-00000.
14. Pritchard KA, Saliba SA. Should athletes return to activity after cryotherapy? J Athl Train. 2014;49(1):95-6. doi: 10.4085/1062-6050-48.3.13.
15. Fullam K, Caulfield B, Coughlan GF, McGroarty M, Delahunt E. Dynamic postural-stability deficits after cryotherapy to the ankle joint. J Athl Train. 2015;50(9):893-904. doi: 10.4085/1062-6050-50.7.07.
16. Thain PK, Bleakley CM, Mitchell AC. Muscle reaction time during a simulated lateral ankle sprain after wet-ice application or cold-water immersion. J Athl Train. 2015;50(7):697-703. doi: 10.4085/1062-6050-50.4.05.


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  # by supersy | 2016-08-17 21:20 | Athletic Training | Trackback | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル9月号発売 & New York出張!

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月刊トレーニング・ジャーナル9月号が発売になっています!
連載4回目の今回は「まさかに備える」という特集のテーマにも沿って、アスレティックトレーナーのお家芸(?)でもある、救急対応のあれこれについて書いています。糖尿病、喘息、呼吸停止時の気道確保、熱中症などについて、アメリカではどう判断しどう処置を施すのが「現在のATのスタンダード」なのかが焦点です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



もうちょっと濃い内容のブログを書きたいとも思うのですが(最近読んでる論文のまとめとか…)、なかなかどうして集中してパソコンの前に座る時間が取れず、バタバタしてしまっています。せっかくなので今回は、先週末行ってきたNew Yorkのお話を少し書きたいと思います。

先週末はNew Yorkはマンハッタンで、PRI創始者のRon Hruska氏によるPostural Respiration講習会があり、最後のFaculty Trainingにと私もお邪魔させてもらっていました。だって、Ronが基礎コースであるPosturalを教えるのって、めったにないことで。Ron自身も、「最後に教えたのはいつだったかな…思い出せないや」というくらいですから。マンハッタンにあるThe Maritime Hotelという海をイメージしたホテル(↓)に泊まりましたが、かわいらしくて快適なホテルでした!夜中も外のクラクション音がパーパーうるさかったのを除けば(これはもう立地的に仕方ない…NYの皆さん、運転荒すぎ、気が短すぎ)、もう完璧に最高でしたよ。また来たい…。
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土曜日の朝8時から講習開始だったので、朝5時過ぎに起床してセントラルパークに散歩に行ってきました!朝から自転車レースやっていてにぎやか。ランニングしてる人もいっぱい。朝日を浴びながら小一時間散歩して、すっきり。この「ビルに囲まれた深い自然」感、浜離宮恩賜庭園を思い出します。
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肝心の講習はというと、最近のPRI講習にはめずらしく6-7割が初受講者という顔ぶれ。Ronが「さゆりたちが日本の講習でかなり実技の時間を増やしてて、それが好評だっていうから…」と言ってくれて(逆輸入?光栄です)、Posturalにしてはかなり確かに実技が長めな構成でした。それでも合計一時間くらいかと思うけど…。日本の講習では実技3-4時間くらい設けたりしてますからね。私個人的な感想としては「このタイミングでRonから改めて学べて良かった!」Ronの発言でときどき宇宙に飛ばされるのは相変わらずですが、この講習に関しては自分の理解も深まっているので特に混乱することもなく、本当に「掘り下げる」ことに自分でも時間を有効に使えたなぁと思っています。いい意味で他の講師が教えているPosturalをぶち壊すような構成で、「そうか、これもアリなのか」と目から鱗でした。でも、「Ronがいずれ日本に来てくれたら、この言葉を日本語に訳さなきゃいけない」となんとなく考えながら講義を聞いていたので、3つに1文くらいに翻訳不可能な言葉が飛んでくるたびに苦笑してしまいました。"Triceps is resonance, triceps is frequencies!"とか、どう訳せばいいの(苦笑)?
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今回、学びの収穫として私が一番改めて聞けてよかった、と感じたのはこういうこと。
1) PRIには数少ないマニュアル(徒手)テクニックがあるが、それでも何かをひっぱったり伸ばしたりしているわけではない。あくまで施術者の手を神経的デバイスとして、患者に必要なNeurological cueを入れるために使うのであって、患者を治療するのはマニュアルだろうとノンマニュアルだろうとあくまで患者自身。
2) 身体をうまく正しく使おう使おう、もっとくれもっとくれ、と要求を重ねると手に入るものは少なくなる。理想的な身体の反応を引きおこすには患者の精神状態も重要な要素。これが如実に出たのがRonがとある参加者を使ってデモを行ったとき。Ron曰く、『気が張っててやったるでぇー!と意気込みすぎていた』参加者さんの顔を見て、「このままエクササイズをさせてもこの人はRepositionできないだろうな」と判断した彼は、あえてこの参加者さんを実験台に選び、優しい口調でゆっくりと、丁寧に運動指導をしました。たちまちRepositionが完了する参加者さん。おおさすが、ぱちぱちぱち。このあとRonはくるりと受講者に向きなおり、「今から全く同じことをもう一回やるから見ていてね」と、この参加者さんに全く同じ指導を『命令口調で』繰り返したのです。言っている内容は同じなのに、「次はこれをしろ!」「これは絶対しちゃだめだ!」と威圧的なトーンで言われることで、参加者さんの筋緊張は目に見えて変わり、同じ運動をしたにも関わらず、エクササイズ後にはPositionが完全に崩れた状態に。明らかに交感神経優位です。このデモを終えて、Ronはにっこり「PRI理論なんて別に重要でもなんでもないんだよ、キミが穏やかなトーンで患者に声をかけさえすれば、それだって時に患者をRepositionさせるのに十分なんだ」と。う、うす…!患者の精神状態の話を講習に取り込む講師はぽつぽついますが、「我々の患者に対する態度も大きな差を生む要因になる」とハッキリ強調してくれたのはRonが初めてだったので、これは次回の講習でも参加者さんにシェアしたいと思います。
3) 「この講習の目的が『強くなること』だと思っている人がいたらそれは大きな間違いです」と、Ron。「この講習は『弱くなるため』のものです」と。これもRonらしい言い回しですが、つまり彼が言わんとしていることは「既に存在するパターンの色を濃くして濃くして、レイヤーを重ねて重ねて『強く』することはPRIの目的の真逆」、そして、「パターンの『色』を『弱く』して、PRIの言うNeutralityを確立する講習である(=そうしないとそもそも鍛えられないよ、強くなれないよ)」ということなんですね。だからもちろん正しくやれば最終的には『強く』なるんですけど、そのためには一度現在のパターンから出ることを覚えなきゃいけないよ、と。ここらへんはMyokinを取ってくださった方はご理解いただけると思うのですが。強くなるのではなく、弱くなるための講習…これに興味がある方は、ぜひまた冬のPRI講習にも遊びに来てください。
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…で。土曜の講習が終わってから、タイムズスクエアに繰り出してきました(↑)!これはタイムズスクエアの全く同じ場所の、夕方 vs 夜中。騒がしくて新宿のようで、私はこういう場所が好きです。ついでに、やっぱりブロードウェイも見なきゃでしょ、ということでリバイブされたばかりのCATSも見てきました(↓)。素晴らしかった…!Orchestraのめちゃめちゃいい席で、舞台から3列目という距離でパワフルな歌とダンス楽しんできました。芸術って素晴らしい、心が洗われるぅ。
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10年ぶりのNew York楽しかったな。いっぱい学んで芸術に触れて、知的に満たされた。博物館や美術館ももっとどっぷり行ってみたいので、次回NYCに来るときはがっつり観光で、5日は使う計算で来ようと思います(笑)。

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  # by supersy | 2016-08-16 22:30 | PRI | Trackback | Comments(0)

同じステロイド剤を入れるなら、注射がいいのかiontophoresisがいいのか?

私、たまに「手技しかしないヒト」となぜか誤解されたりするんですが、実は物理療法大好きです。バランスの取れたクリニシャンでありたいと思っていますし、患者を改善させていくにあたって物理療法と運動療法、そして徒手療法を併用してこそ最も効果が出ると思っています。そんなわけで、今日は物理療法の話を。
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物理療法の中でも特に私が「ポイントを抑えて使えば大きな効果が期待できる」と思っているものがいくつかあるのですが、そのひとつがiontophoresis(イオン導入療法)です。抗炎症剤や鎮痛剤など患者が医師から処方された場合、その薬を体内に導入する投与経路は1) 経口投与、2) 皮下、経静脈、経動脈や筋肉内などの注射投与などなど色々ありますが、3) 薬剤をイオン化し、電解質溶液にしてそこに直流電流を流し、例えば薬剤が+の電荷を持つ電解質になったならばそこに+電極を持ってきて、同じ電荷をぶつけあい、反発を促すことで薬剤を物理的に動かし、体の深部に浸透させる…という面白い方法もあるのです。これがiontophoresisです。
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一般的に経口投与はどうしても全身の血流に乗って薬が巡るため、効果が局所ではなく全身に広がってしまうこと、そして、肝臓や腎臓に負担がかかることなどが短所です。注射による投与は、局所的な投与が可能という利点こそあれ、やはり注射が痛い・怖いという患者が一定数いること(アメリカは特に多い印象があります、国民性かなー…)、そしてinvasive(肌を突き破り、侵入的である)な治療なので感染症のリスクがあることなどが挙げられます。そうなると、iotophoresisはなかなか魅力的な選択肢に思えます。局所的な治療が可能で、肝臓や腎臓に負担をかけず、針を刺す痛みもなく、感染症のリスクも生むことなく薬の投与が可能なんですから。

比較研究: そんなわけで、効果と危険性をざっとreviewしたくて、iontophoresisと注射によるステロイド剤の投与の比較研究を引っ張り出して読んでみました。 直接比較している論文は4つしか見つけられなかったです。さっくりまとめます。

1. Gökoğlu氏らの1 研究では30人のCarpal Tunnel Syndrome (CTS、手根管症候群)患者をランダムに1) 40mg methylprednisolone acetate injection (1回ポッキリ) もしくは2) iontophoresis経由でのdexamethasone sodium phosphate (一日おきに一週間)組にわけて治療。治療から2週間後と8週間後の経過を追いました。 両グループとも痛み、諸症状、機能共に著しい回復が見られましたが、回復の度合いは注射組のほうが高かったそう。Adverse effect, side effect, complicationなどの悪影響はどちらのグループでも報告されず、だそうです。

2. Karatay氏らは2 45人のCTS患者にdexamethasoneを 1) injection、2) iontophoresis、3) phonophoresis による投与の3組(どれもn = 15)にわけて治療。結論としてはiontophoresis/phonophresisの効果は3ヶ月と持たなかったのに対して、注射による症状改善は治療開始後1ヶ月から如実に出始め、4ヶ月をピークに6ヶ月後まで保たれていた、 と。悪影響については記事では一切触れておらず(なかったともあったとも記述なし)、こちらのほうの比較はできませんでした。

3. Stefanou氏らは3 1) 10mg dexamethasone iontophoresis, 2) 10mg dexamethasone injection, と 3) 10mg triamcinolone injection組のいずれかに82人の外側上顆炎 (lateral epicondylitis)患者を分類。3つ全てのグループが等しく痛み・機能が短・長期的(治療終了直後と6ヶ月後)共に回復したのですが、短期的に見たグリップストレングスと職場復帰はIontophoresis組が格段に良かったとのこと(『制限を感じずに職場復帰できた』患者の割合 – 82% in ionto group, 29% in dexamethasone injection and 33% in triamcinolone injection, p < 0.05)。合計7人の患者が改善が見られず結局手術に踏み切ったそうですが、著者によれば「数が少なすぎるため」統計的に分析することは不可能、だそうで、どのグループが特に手術のリスクが高い云々とは断言できない、とのこと。それでもcomplicationsについてはこんな記述がありました: 1) 注射組患者の10%未満が注射後に患部の痛みを訴えたが、2日以内に全てなくなった、2) iontophoresisを受けた患者のひとりが薬剤パッチを張った部位に皮膚のかぶれを訴えたが、パッチを取ってから3日以内に完治、3) パッチを張る前に患部の毛を剃ったことで、同様に2人の患者が皮膚荒れを訴えた…とのこと。どれも比較的すぐに回復する、マイナーなものばかりという印象ですね。

4. 最後、これは整形外科の怪我ではないのですが、Mehrsai氏ら460人のPeyronie's diseaseの患者を集めて行った研究も一応紹介を。1) 10mg verapamil and 4mg dexamethasone via iontophoresisと2) 同じ薬をinjectionした場合 (どちらもn = 30)を比較したこの研究では、どちらのグループもplaque size、erectile dysfunction、penile deviations等について等しく著しい改善が見られたとのこと。ただ、erectile painに関してより大きい減少が見られたのはIonto組だったそう(from 5.1 to 1.0 in the Ionto, from 5.4 to 3.6 in the injection group, p = 0.006)。Complicationsやadverse effectsについてはこの研究では一切言及がなく、ここんとこは不明のままです。

比較研究からは安全性に関して十分な情報が得られなかったので、リスクなどを論じている論文をiontophoresis, injectionそれぞれで別途で探してみました。こちらもさっくりまとめます。

Iontophoresisとその安全性: やはり電流を使う物理療法である、ということで、Warden5氏はiontophoresisのcontraindication(禁忌)に 1) 電流に対するhypersensitivityや、以前使用したときに有害反応が見られたことがある、もしくは2) 処方された薬物そのものの副作用を感じたことがある、という2項目を挙げています。肌荒れやかぶれ(skin irritation)は決して珍しくはない、とした上で、「稀ではあるが」と前置きして、電流が非常に強い場合、やけどなどの熱性の怪我が起こる確率もゼロではない、とも書いています。しかし、この論文で Warden氏は5 iontophoresisの利益は不利益をはるかに上回るものであり、治療者が患者としっかりコミュニケーションを取りさえすれば(例えばどこまでがこの治療の「アタリマエ」で、どんな感覚が生まれたら「報告すべき異常」なのかとか) iontophoresisの危険性は最小限に保たれ、「安全な物理療法」と呼ぶに足る、と結論を出しています。Patane氏ら6はウサギを使ってiontophoresis (dexamethasone)をカラダの中でも最もsensitiveな部位である目に使用してみたらしいのですが(ひー!)、この治療はウサギちゃんにとって"well-tolerated(耐容性良好)"であり、一時的にmild complicationsが出たくらいで(i.e. conjunctival hyperemia, chemosis, and mild corneal opacity)『安全』だったそうな。次のステップは人体実験ですが、著者らはこの動物実験に基づき「iontophoresisは長期的、もしくは反復的なステロイド剤の使用を必要とする炎症系眼疾患を治療するには有効な治療法かもしれない」と結論づけています。へー。

ステロイド剤注射とその安全性: やはりどうしても針が体内に入る関係で、例えば手術前に関節内にステロイド剤を注射した患者は、注射しなかった場合に比べて格段に手術後の感染症のリスクは高まるそうな。7 あと、ご存知の方も多いかと思いますが、軟部組織に使った場合(特に複数回)、損傷や組織の弱化、症例でいうと足底筋膜8 腸腰靭帯(IT Band),9それからアキレス腱10などの断裂につながったという報告はありますね。 あと、疲労骨折や骨の壊死が起こったケースもあるんですって。11 こういうのは症例ベースの報告が主体なもので、残念ながら何人当たり何件、とか、こういう条件に当てはまる人のリスクが何%、とか、そういうのを計算できる公式のようなものは現時点で存在しないですし、実際のprevalenceがどんぴしゃで何%くらいなのかというのも分かっていません。あ、あとね、文献を読んでいたらびっくりするような症例もありまして、えーと、51才の 2型糖尿病、甲状腺機能低下症、PTSDと不安症・鬱と両側の膝関節症がある女性患者さんが(これもすごいリストですけど)膝のOA治療にステロイド注射を打った後、自殺衝動を訴えて病院に緊急入院、ということがあったそうで。12 これだけなら因果関係はわからないじゃん、と言われそうですが、この患者、数ヶ月経って心の症状が安定したので、また膝のOAの注射を打ちに行った→自殺衝動再発→緊急入院→退院…をこのあと2回、合計3回繰り返したそうで、これはもう偶然ではないと。ステロイド注射にどうやら起因するのではないか、ということで、精神医学的副作用が出た最初の症例ということで論文に報告されています。12そんなこともあるんか…。

こうして文献を色々見てみると、直接リスクを比較した研究が無いのと、Iontophoresisに関してはまだまだ長期的(年単位とか)に患者を追った研究が欠如しており、決定的な結論を出すのは難しそうですが(今回reviewした研究も障害、治療期間、薬剤、服用量ともに異なりますしねぇ)、私の個人的な見解としてはiontophoresisの副作用・有害反応は総じて軽く、一時的なものが多い反面、ステロイド剤注射のそれは中には長期的なdisabilityにつながる(i.e. soft tissue ruptures, bone disruptions)ものもあるなぁと。頻度、深刻度、両方の観点から、iontophoresisのほうがより安全な選択肢であるようだ、というのが今のところの私の結論です。iontophoresisの長期的効果を追った研究、これから出ますかねー、見てみたいなー。

1. Gökoğlu F, Fındıkoğlu G, Yorgancoğlu ZR, Okumuş M, Ceceli E, Kocaoğlu S. Evaluation of iontophoresis and local corticosteroid injection in the treatment of carpal tunnel syndrome. Am J Phys Med Rehabil. 2005;84(2):92-96.
2. Karatay S, Aygul R, Melikoglu MA, Yildirim K, Ugur M, Erdal A, Akkus S, Senel K. The comparison of phonophoresis, iontophoresis and local steroid injection in carpal tunnel syndrome treatment. Joint Bone Spine. 2009;76(6):719-721. doi: 10.1016/j.jbspin.2009.02.008.
3. Stefanou A, Marshall N, Holdan W, Siddiqui A. A randomized study comparing corticosteroid injection to corticosteroid iontophoresis for lateral epicondylitis. J Hand Surg Am. 2012;37(1):104-109. doi: 10.1016/j.jhsa.2011.10.005.
4. Mehrsai AR, Namdari F, Salavati A, Dehghani S, Allameh F, Pourmand G. Comparison of transdermal electromotive administration of verapamil and dexamethasone versus intra-lesional injection for Peyronie's disease. Andrology. 2013;1(1):129-132. doi: 10.1111/j.2047-2927.2012.00018.x.
5. Warden GD. Electrical safety in iontophoresis. Rehab Manag. 2007;20(2):20,22-23.
6. Patane MA, Schubert W, Sanford T, Gee R, Burgos M, Isom WP, Ruiz-Perez B. Evaluation of ocular and general safety following repeated dosing of dexamethasone phosphate delivered by transscleral iontophoresis in rabbits. J Ocul Pharmacol Ther. 2013;29(8):760-769. doi: 10.1089/jop.2012.0175.
7. Werner BC, Cancienne JM, Burrus MT, Park JS, Perumal V, Cooper MT. Risk of infection after intra-articular steroid injection at the time of ankle arthroscopy in a medicare population. Arthroscopy. 2016;32(2):350-354. doi: 10.1016/j.arthro.2015.07.029.
8. Acevedo JI, Beskin JL. Complications of plantar fascia rupture associated with corticosteroid injection. Foot Ankle Int. 1998;19(2):91-97.
9. Pandit SR, Solomon DJ, Gross DJ, Golijanin P, Provencher MT. Isolated iliotibial band rupture after corticosteroid injection as a cause of subjective instability and knee pain in a military special warfare trainee. Mil Med. 2014;179(4):e469-472. doi: 10.7205/MILMED-D-13-00438.
10. Turmo-Garuz A, Rodas G, Balius R, et al. Can local corticosteroid injection in the retrocalcaneal bursa lead to rupture of the Achilles tendon and the medial head of the gastrocnemius muscle? Musculoskelet Surg. 2014;98(2):121-126. doi: 10.1007/s12306-013-0305-9.
11. Nichols, A. W. Complications associated with the use of corticosteroids in the treatment of athletic injuries. Clin J Sport Med. 2005;15(5);E370.
12. Malladi AS, Gratton SB, Stone D, Scalapino KJ, Charles JF. Recurrent adverse psychiatric effects following intra-articular corticosteroid injection. J Clin Rheumatol. 2011;17(5):284-285. doi: 10.1097/RHU.0b013e318227ab11.

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  # by supersy | 2016-07-22 10:00 | Athletic Training | Trackback | Comments(1)

月刊トレーニングジャーナル8月号発売 & EBP講習 in 船橋!

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船橋整形外科病院さんとおおすか整形外科さんの共同開催で、昨日は船橋で一日Evidence-Based Practice (EBP)講習してきました!若い理学療法士さんを中心に50人弱もの医療従事者さんにご参加いただきました。7時間半の講義、しかも英語論文までガンガン読まされたらさぞかし脳みそトロトロだったろうかと思うのですが、皆さん若さをパワーに最後まで食らいついてきてくれました。日本の講習では珍しいくらいガンガン質問もしてもらってうれしかったです。参加者様、関係者の皆様、ありがとうございます!最後、なぜか皆でカンチョ―ポーズで写真を撮りました。
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今回運営していただいた船橋整形外科病院の梅原さんとおおすか整形外科の根本さんと私は実は1983年生まれの同級生と分かり、一気に親近感!同年代の仲間がそれぞれの分野で活躍していると特別うれしく感じるのは、なんででしょうね?今度はぜひもうちょっとゆっくりお喋りしたりしましょう!楽しい一日をありがとうございました。


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さて、月刊トレーニング・ジャーナル8月号が発売になっています!
連載3回目の今回は実はずっと書きたかったテーマ、culturally competentな医療従事者になることの重要性とその意味などについて書いております。貴方は自分の文化的能力、育てていますか?興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。
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  # by supersy | 2016-07-11 14:30 | Athletic Training | Trackback | Comments(2)

Digital Patientについて学んでみました。

以前にStandardized Patient (SP)の話を書きましたが、今回はデジタル患者というか、ヴァーチャル患者について学ぶ機会があったのでまとめておきます。ただの感想記になりますが。

私が今回学んだのはShadow Healthというシステムを通じてのヴァーチャル・ラーニングで、一般には看護学生によく使われているらしいのですが、他にも薬学やATの授業でも用いられているそうな。
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紹介動画はこちら。別に宣伝しているわけじゃありません(私自身購入して使ったわけでも何でもなく、ああこんな手段もあるのねー、と思ってるだけです、念のため)。

用途別に色々な使い方ができて、例えば、下級生には急性の症例を課して、History taking中心の診断経験をさせ、そのあとその患者が3日ほど病院に入院している経過を時間軸と共に追っていく、とか、上級生は慢性的な症例を担当し、DDxからのPlanningに重きを置く、とか…。色々工夫のし甲斐はあるようです。患者さんと対面している最中は時間と言う概念がないので、例えば「えーと、えーと、次は何を聞こうかな…」と考えている間に妙な沈黙が生まれても何も弊害はありません。むしろ学生が一問一問時間をかけて質問を練りこみ、的確なHistoryを取る、つまり、何ていうんでしょうね、質問のmappingとでも言うのでしょうか?そういうスキルが伸びるようです。こうして徐々に「問診時の緩やかな流れ」をつかむことで、実際の患者さんを診断するときにスムーズな会話力が身に着くのだとか。

ここまでで私に浮かんだ疑問は、「患者さんに感情表現はあるのか?例えば、患者さんを怒らせてしまったり、なんてこともある?」「触診やSelective Tissue Assessment Testのような、endfeelなんかを触覚的に感じなければいけない項目はどうやって表現されているんだろう?」でした。担当の方に伺ったところ、前者の質問の答えは「No」。例えば腰痛を訴えてる患者さんが、「仰向けになって/うつ伏せになって」と指示した時に痛みで顔をゆがめたり、ということはあるようですが、不適切な質問をしたり、同じ質問を何度も繰り返しても患者がイライラしたり不快感を示すようなことはないそうです。あくまで、プログラミングされた質問に対して、プログラミングされた答えを述べる、と。そして二つ目の質問の答えは「○○が発見された、というように触覚によってのみしか判断できないfindingは文字にして提供している」そうです。なるほど。

私の率直な感想としては、「なるほど、事実をただ詰め込むより、problem-solving learningとして今の世代の学生とってこういうツールは『ツカむ』のに有効そう」。前回のSPの時も触れたかと思うんですが、clinical reasoningとclinical decision-making skillsってなかなか教えるのが難しい。文献でも、ヴァーチャル体験はそこらへんを教え込むのに良い、とあります。1,2
どうしても疑問だったのはリアリズム。意外なことにGesundheit氏らの研究1によれば、(まだ実習を始めていない)医学部2年生はこの ヴァーチャル体験をSP体験に比べてより “believable (信じるに足る)”そして“appropriately challenging (ちょうど良い難易度)” と評したらしいのですが、私としては、学生の中に「ゲーム感覚」が生まれてしまって、「コイツどこまでついてこれんの?」と、無関係だったり場合によっては不適切な質問をぶつけるようになってしまうのでは、という心配があります (Siriにスリーサイズを聞いたり好きな食べ物を聞いたり…皆さんも身に覚えがあるでしょう?)。これは実際にWebinarの最中にもプレゼンターさんが言及したところで、「あまりに変な質問にいちいち患者が対応してしまわないように、実は返答可能な質問数をかなり最近削ったんです」とのこと。これを実際に授業で用いるとしたら、いくらでも使えるようには敢えてしてしまわずに機会を制限したり、きちんと実際の患者という心持で扱うよう指導することは必要だなぁと思いました。ゲームではない、と一線を引かせないとね。

楽しい、という率直な感想は素晴らしいと思うんですよ。2 楽しく学んでもらえるというのはこういうシステムの強みですよね。それに、まだまだ駆け出しの学生にとってこの学習環境は『安全』であり、時間に追われず、自分自身のペースで考えながら学び進むことができる。焦ったりパニックになったりは、実際の患者を目の前にしているときよりは格段に起こりにくいでしょうからね。ただ、問題は実際の患者さんの診断をしてるときにはもっと考慮・実践すべき要素があるわけです。例えば患者さんがなんだかそわそわ、居心地悪そうにしているなぁ、と思ったらnon-verbal communicationを通じて(i.e. 声のトーンを変えたり、表情を変えたり)患者を安心させる必要もあるし、言葉遣いを細かく選びながら彼らがまだ打ち明けてくれてないかも知れない情報をするすると引き出したり、患者がぼんぼこぶつけて来る情報の塊を整理しながらもスムーズな会話を続ける話術とかもですね、まぁ色々と必要ですよね。ここらへんもひっくるめて『患者との対話力』なんじゃないかと。こういうスキルはどうしてもデジタル患者とのやりとりでは身につかないでしょうし、だからこそ(実習を既に始めている)医学部4年生の子らには(2年生の子らと比較して)現実味があると判断する子が圧倒的に少ない(p≤0.05)なんていうこともあるんだろうな、と。1 結論としては、SPもデジタル患者を通じての教育も、学生からしたら等しく「満足である」らしいのですが、やはり提供している学びの質が少し違うように思いますね。1 私としては、デジタル患者とのやり取りはどちらかというと駆け出しの学生向きなのかなと。新しいコンセプトを学び、実践していく上で (i.e. 良いHistoryを取る, 適切なDDxと治療プランを打ち出していく, etc)、学生をoverwhelmさせることなく、安全に楽しくそのコンセプトをつついたりつまんだり練ったりしながら模索してもらうにはちょうどいいかなと思うんです。で、基礎力がついたところでSPを使う、という流れが私の頭の中でできています。

ちなみに価格は学生ひとりあたり$99と教科書とさほど変わらないほか、一度購入すれば一生アクセス権は保持できるらしいので、卒業しても学びの道具として使い続けることが可能のようです。コストパフォーマンスは良いですね。それぞれの患者との対面が終わった後に自動的に評価レポートがシステムによって作られ、指導者も学生も見直すことができるのもポイント高いです(評価とか採点って、意外と本当に時間がとられる作業なのです…)。私の職場環境から、今すぐに使い始めるってわけにはなかなかいかなそうですけど、機会があればこういったプラットフォームを通じての教育も、これからもっと積極的に取り組んでいきたいです!


1. Gesundheit N, Brutlag P, Youngblood P, Gunning WT, Zary N, Fors U. The use of virtual patients to assess the clinical skills and reasoning of medical students: initial insights on student acceptance. Med Teach. 2009;31(8):739-742.
2. Forsberg E, Ziegert K, Hult H, Fors U. Clinical reasoning in nursing, a think-aloud study using virtual patients - a base for an innovative assessment. Nurse Educ Today. 2014;34(4):538-542. doi: 10.1016/j.nedt.2013.07.010.

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  # by supersy | 2016-07-08 09:00 | Athletic Training | Trackback | Comments(0)

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